話題:変な夢


明け方ぐらいでしょうか。スヤスヤと眠る私の夢の中、予告もなく突然に或る人物が姿を現しました。そしてそれは、他の誰でもない自分自身だったのです。

とは言え、私は私でちゃんと夢の中に主観カメラのアングルをもって存在して居ましたから、必然的に私と━“もう一人の私”=便宜上、以後は“アナザー”と呼ぶ事にします━が対面する形となった訳です。

実は、このアナザー、たまに夢の中に登場して何かしらクダラない事を言って去って行くのですが、昨日は少し様子が違っていて何やら困ったような顔をしていました。

そこで、夢の中の私が『どうした?』と尋ねると、アナザーは少し呆れたような口調で言って思いもよらない話を切り出して来たのです。

『あのさ…“限りなく透明に近いブルー”の作者って誰か知ってる?』

何故いきなり、そんな話をするのかはサッパリ判りませんが、取り敢えず私はアナザーの問いに対し即答をもって返しました。

『ああ、知ってるよ。村上龍でしょ?』

私の答えを聞いたアナザーは軽く頷きながら更にに言葉を続けました。

『田中康夫じゃないよね?』

『田中康夫は“なんとなくクリスタル”でしょ。まあ、透明とクリスタルがリンクしてはいるけど、作風も内容も全然違うからね、間違える事はないだろうよ』

ところが、アナザーはあまり納得してしないようでした。

『判ってるならいいけどさ…ほら、君、焦るとよくイージーミスしたりするからさ』


そこで夢から醒めたのですが、その瞬間、或る一つの嫌な予感が私を襲いました。それで、慌てて昨日の記事を読み返してみたところ…案の定、やらかしていました。

つまり、夢の中の話通りに私は【限りなく透明に近いブルー】の作者を村上龍ではなく田中康夫と書いてしまっていたのです。

もちろん、その場ですぐに訂正して再更新(日時はそのまま)しましたが、もし夢の中での自分(アナザー)との会話が無かったら、恐らくはそのままとなっていた事でしょう。

当人は、村上龍と田中康夫を取り違えている可能性など微塵も考えていなかったにも関わらず、恐らくアナザーはその事に気付いていた。

一つの推測を基に言い方を変えるならば、顕在意識(私)が見逃していた事柄も、潜在意識(アナザー)は見逃す事なくしっかりと捉えていたのです。そして、潜在意識が“何とか間違いを正そう”と、夢の中に“もう一人の私”という形をとって現れたのではないだろうか?

そう考えると、これは、ちょっと不思議かつ面白い現象であるように私には思われたのでした。

窓の外は雨。雨の降る日曜日。取るに足らない些細なミスと小さな安堵感。

【認識】について考えながら雨の中を散歩するのも悪くないだろう。私はそんな気持ちになっていた。

冬の雨というには暖かい、春の訪れを予感させる気持ちの良い雨。

雨天止むなしとするならば、それは、哲学風の散歩には最適な日であるように思えたのだった…。 


《終わり》。