誘拐犯‐A kidnapper‐【8】。

話題:連載創作小説


ここで再び話を元の時系列に戻そう。場所は水島邸、時刻は午後七時を少し回った辺りである。

誘拐犯との交渉の末、ようやく人質となっている息子の博之と直接電話で話すという念願が叶った水島夫妻であったが、その様子は明らかに普通ではなかった。

博之の口ぶりは、とても誘拐されている人間のものとは思えないものだったのだ。そして、何故か咎めるような口調で話す父親の隆弘に対し、人質の少年は微かに不満の色の滲む声で言ったのである。

(でもパパ、誘拐したのはこの人なんだよ。悪いのは誘拐犯、そうでしょ?)

小学生らしい単純な物言いではあるが、博之の言っている事は正しい。誘拐は許されざる犯行であり、誘拐犯は、例えそこに如何なる理由があるにせよ犯罪人である。そこに議論の余地はない。しかし…

父親の口から出たのは、思いもよらぬ言葉であった。

「…確かに、その人は悪い事をした。でも…そう“仕向けた”のは、博之、お前なんだろう?」

いよいよもって不可解な人質とその両親との会話。ここに至り、話の様相は完全に逆転していた。そして、この時点において妙な事が実はもう一つあった。言うまでもなく、それは“誘拐犯”の現在である。犯人は電話を代わる際、確かにこう言った筈だ、「少しだけだぞ」と。逆探知で居場所を知られる事を恐れる身としては当然の事だろう。…にも関わらず、博之と両親、つまり人質と家族の会話に犯人の横槍が入る気配が全くないのだ。

いったい犯人は、今どこで何をやっているのだろうか?

しかし、そんな謎をよそに人質の少年は平然と語り続けたのだった…。


《続きは追記に》。

 
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最終(だといい)経過報告『誘拐犯‐A kidnapper‐』。


話題:現在進行形な原稿


はい、こんばんは。顔面の凹凸がグランドキャニオンなみの高低差を持つトキノ伯爵です。

ただ今連載中のSF純愛ホラーサスペンスミステリー歴史絵巻的お伽話(ウソ)『誘拐犯‐A kidnapper‐』に関する最終経過報告を致したいと思います。

つい先ほど、『誘拐犯‐A kidnapper‐』全編をザックリとではありますが、下書き終了致しました。(^∀^)ノ

但し、このままでは《マダムヤン》と違い、お客様にお出し出来ないラーメンですので、明日、加筆修正する事になる訳ですが、取り敢えず、ここに下書き終了を報告させて頂きます。V(^-^)V

なお、長さに関して…本来ならば次の【8】、一編で終わらせた方が内容的しっくり来るのですが…どうにも、少し長めになる事は避けられそうにありませんで、【8】【9】の二つに分割し、【9】を完結編としたいと考えております。

それでは皆様…

よいお年を♪(違いますから…マスカラ…ミル・マスカラス)(°□°;)えっ?

 

誘拐犯‐A kidnapper‐【7】。

話題:連載創作小説


【少女発見】の報を受け、俄かに色めき立つニュース番組のスタジオ。ベテランの域に差し掛かった男性キャスターが、すかさず現場の女性リポーターに鋭い口調で問いかける。

「溝口さん!女の子が発見されたという事ですが、名前など詳しい情報は入っていないのでしょうか?」

すると、激しい雨のせいで通信が不安定になっているのか、溝口と呼ばれた女性リポーターはしきりに耳のイヤホンを押さえてスタジオからの音声を聴き取ろうとしていたが、どうにも繋がらないらしく、やがて諦めた様子で喋り始めた。

「発見された少女の状態や名前に関しては、間もなく警察から正式な発表がある模様です。あっ、ちょっと待って下さい!」

スタジオの空気に緊張が走る。画面を見つめる誘拐犯も思わず固唾を飲んで、その一部始終を見守っていた。

「たった今、入った情報に拠りますと、発見された少女は【Kコーポレーション】の会長の孫で年齢は九歳、怪我などはしていない模様。繰り返します、発見された女の子は会長の九歳になる孫娘だと言う事です。以上、現場から溝口がお伝えしました」

リポーターの報告が終わったところで、画面は一旦スタジオへと戻された。

事件の奇妙な展開に、誘拐犯はすっかり我を忘れて考え込んでいた。ところがその時、誘拐犯の耳に、すぐ脇でポソリと呟く博之の声が飛び込んで来たのだった。

「…やっぱりね」

えっ?

誘拐犯は耳を疑った。この展開のどこが“やっぱり”なのだ?…だが、反射的に博之の方に目をやった誘拐犯に対し、当の本人は何事もなかったかのような涼しい顔で、ペットボトルの“緑茶”を美味しそうにゴクゴクと飲むばかりだった。

その後、警察からの発表で新たに二つの事実が判明した。

まずは、その九歳の少女は祖父である会長に誘われて【Kコーポレーション】本社敷地内にある役員専用娯楽施設(詳細は不明)に遊びに来ていた事。

次に【Kコーポレーション】で数秒間、原因不明の停電が起こった後、室内にいた人間の姿が突然消えているのを知り、怖くなった少女が捜査員に発見されるまで娯楽施設の室内にあるクローゼットの中に隠れていた事。以上の二つである。


《続きは追記に》。 
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プチ経過報告『誘拐犯‐A kidnapper‐』。


話題:執筆経過&状況


と云う訳で、もっか好評レンタル中の由比正雪ならぬ連載小説『誘拐犯‐A kidnapper‐』でありますが…

次回の【7】は既に書き上がっております。おりますが…一度、自分で下読みをしてから掲載したいので、アップアップ状態のアップは明日、林檎(アップル)をかじりながら、とさせて頂きます。(^∀^)ノ

なお、完結は【8】。もし【8】がシロ長スクくなジラり過ぎるようであれば、【8】と【9】の2つに分割して16分割鬼の亜星(小林亜星、クイズ・ヒントでピント)でお届けしたいと考えております。

それでは、寒い日が続いておりますが、「自分は寒さに強いシベリアンハスキーなのだ!」と言い聞かせ“ゴン太の骨っこ”でもガジガジやりながら佐藤蛾次郎さんと一緒に暖かくお過ごし下さいませ♪(*^o^*)

 
PS.

ドモホルンリンクルは、初めてのお客様にはお売りしておりません。

 

誘拐犯‐A kidnapper‐【6】。


話題:連載創作小説

「おっ…どうした、何か用か?」

敢えて、ゆっくりと落ち着いた感じで誘拐犯が博之に尋ねる。

「喉が渇いちゃった」

何の事はない。如何に子供らしい、ごくごく単純な話である。確かに、あれだけ熱中してゲームをやれば喉も渇くだろう…。

「冷蔵庫に飲み物あるから、コーラでもコーヒー牛乳でも何でも好きなの飲んでいいぞ」

誘拐犯が小さく笑いながら冷蔵庫の方を指さすと、博之もニッコリと笑いながら言った。

「うん、判った。ありがと」

冷蔵庫には、このような状況―誘拐した後の軟禁―になる事を予め見越して、子供が好きそうな飲み物が何本も入れてある。ところが、誘拐犯の予想に反して博之が持って来たのは、誘拐犯自身が飲むつもりで買っておいたペットボトルの“緑茶”だった。特に驚くほどの事とも言えないが、軽く虚をつかれた形になっている誘拐犯に、人なつこそうな声で博之が言う。

「ねぇ…僕も、ちょっとだけテレビ観ていい?」 

天真爛漫な博之の態度に、思わず誘拐犯の気も緩む。騒々しくされるのは正直困るが、テレビを観るぐらいなら別に問題はないだろう。

「ああ、いいよ」

許しを得た博之が誘拐犯の横にチョコンと座るのと殆ど同時にコマーシャルは終了し、テレビ画面は再び現場からの中継に戻った。

雨の降りしきる【Kコーポレーション】の本社前は既に夕闇の暗さとなっていたが、上空を覆い尽くすように立ち込める黒い雲の異様に発達した姿が、この奇怪な事件をより一層、不気味に演出していた。

そこには相変わらず、多くの報道関係者や《立ち入り禁止》の黄色いロープを潜って行ったり来たり忙しなく動き続ける捜査員たちの姿が映し出されていた。他にも【Kコーポレーション】の関係者や失踪した社員らの家族らも多数押しかけている筈だが、恐らく彼らは別の場所に集められ、そこで捜査本部の人間に色々と事情を聴かれているのだろう。激しい雨のせいで、事件の大きさの割に野次馬の数が少ない事も手伝ってか、異様な緊張に満ちた雰囲気ではあるが、怒号が渦巻くといった感じの大きな混乱は見られなかった。

 
《続きは追記に》。

 
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