話題:創作小説


とある晴れた日、俺がいつものようにブラブラと街をほっつき歩いていると、何やらどこかで見かけたような顔が前から歩いて来るのが見えた。

念の為に言っておくが、“顔が単独で”歩いて来たのではない、“そのような顔をした男”が歩いて来たのだ。

しかし、それはあくまで俺が“そのような気がする”というだけであって、はっきりとした確信がある訳ではない。ましてや、アイツは誰ソレだ等と断言する事は無理な相談だった。いや、それどころか見ず知らずの人間だという可能性すらあるだろう。

ところが、その男は私に気が付くなり途端に笑顔になって『あ、お久しぶりです』と声を掛けて来たともなれば、これはもうアレである、ソイツは俺を知っているのだ。

『ああ、久しぶりだね』 

つい反射的に答えた俺だが、間近で眺めてもソイツがいったい何処のどいつなのか、まるっぽ思い出す事が出来ない。

それでも、コイツが誰なのかを何とか思い出そうと俺は必死で記憶の糸を手繰った。

アイツでもアイツでも、アイツでもない、ましてやアイツではないし、アイツとは明らかに違う…唯一、アイツである可能性はギリギリ残っているが…ちょっと違う気がする。確かにコイツ、アイツにちょっと似てはいる。だが、何処がどう違うというより、あの辺もこの辺もその辺も、全体的にコイツとアイツの雰囲気が違っていた。恐らく、コイツはアイツでもない…。

しかし、そんな俺の困惑をよそにソイツは尚も親しげな感じで話し掛けて来たのだった。

『本当にお久しぶりです。もしかして、あの時以来ですかね?』

あの時…。

コイツはいったい“どの時”の事を言ってるのだ?

黙り込む俺を見てソイツが言う。

『スミマセン…確かに、こんな街のド真ん中でする話じゃなかったです。ゴメンナサイ』


《続きは追記に》…。

 
more...