話題:写真詩

気まぐれな南風に吹かれた冬の砂浜の片隅で、埃をかぶった忘れ物が顔を出しました。

それは…

9日前、この砂浜で別れた恋人たちが落としていった小さなサヨナラの言葉なのか。

9年前、この砂浜で生まれて初めて“海”を見た少年からこぼれ落ちた笑顔の欠片なのか。

9億年前、海から陸地へと一歩を踏み出した生物の明日への希望なのか。 


或いは…

9年後、9百年後、9万年後、この砂浜を訪れる見知らぬ誰かへの道しるべなのか。

それを知るのは無口な灰色の砂ばかり。

けれども、やがて吹きくる忘却の北風に姿を消したとしても

遥か永遠の空の下、失われる事のない密やかな呼吸を繰り返します。

ねぇ、砂浜って…

どこか“記憶”に似ているとは思いませんか?



【詩的トランプ】シリーズ (No.04)


◆追記にプチ後書き◆

 
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