話題:突発的文章・物語・詩

日曜日のU公園は天気の良さも手伝ってか、かなりの人でごった返していた。

(えっと…目印は確か、深緑色のベレー帽にパイプだったな)


俺が此の公園に来たのには理由がある。

先日、高校時代からの友人であるAと久し振りに飲みに行った時、Aが鞄の中から一枚のスケッチ画を出して、俺に見せたのだ。

それはAの似顔絵だったのだが、俺はそのスケッチを一目見た瞬間、思わず感嘆の声を漏らしてしまった。

それほど、その似顔絵はAに似ていたのだ。顔の特徴をしっかり捉えているのは勿論、造形ではなく表情が醸し出す雰囲気みたいなもの迄も実に的確に、そして豊かに描かれていたのだ。

感心しきりの俺に、Aが「な、凄いだろ?」と、いささか自慢げに話し掛けて来たので、誰に描いて貰ったのか尋ねたところ…“U公園で商売している似顔絵描きの爺さん”だと言う。

なんでも、その界隈では天才絵師として名の通っている人物らしいが、Aもその辺の事情は大して詳しくは無いらしく、爺さんの名前などそれ以上の事は全く知らないらしい。

自慢ではないが…俺は、頭蓋骨の中身は全く自信ないが、逆に頭蓋骨の外側にはかなり自信があるのだ。

もしも、この似顔絵を描いた絵師が俺を描いたなら、どれほど素晴らしい出来映えに…

そう思うと、居ても立ってもいられず、わざわざ電車を二本乗り継いでU公園にやって来たのだった。

思いの他、似顔絵描きの数が多いのには驚いたが、お目当ての絵師の特徴をAから聞いているので、探すのにさほど苦労は無いだろう。

実際、深緑色のベレー帽とパイプ、そして老人男性という三つの条件を満たしている人物は、公園の中に一人しか居なかった。

そして、幸いな事に先客も居なかったので、俺はすぐに似顔絵を描いて貰う事が出来た。

 
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