話題:ちょっwおまw

【おめでトーマスは機関車。厳正なる審査の脚気(かっけ)…いや、結果…当社は貴殿を“仮採用”する事に決定致しました。つきましては、明日の午前9時半に本社人事部の方まで起こし下さいますよう、軽くお願い致します】

そんな通知ハガキの文面を読んで、上谷裕子は喜んだ。

裕子は、先日、とある会社の採用面接を受けていたのだ。

そして、たった今、裕子の元に届いたハガキは、面接の合格通知‥即ち、裕子の採用を告げるものに違いなかった。

フザケた文面に一抹の不安は感じるが…何せ就職氷河期の時代である、贅沢など言ってはいられない。裕子は素直に採用を喜ぶ事にした。

そして、明日は間違っても遅刻などしないよう、この日の夜はいつもより少し早めに‥そう、2分だけ早く寝床に着いたのであった。


コケっと明日━


クリスタルな朝日を浴びてキングに輝く大都会の高層ビル、通称《クリキンヒルズ》を目の前に、裕子は緊張を隠し切れなかった。

(今日から私も、“ああ果てしない夢を追い続ける大都会OL”なんだわ)

裕子は、目前に聳える《クリキンヒルズ》の横を通り抜け、その真裏にある古い4階建ての雑居ビルへと歩いていった。

雑居ビルの入り口には、いい感じで焼けた木製看板が掛けられている。

《もへもへ昭和ビル》

間違いない。

ここが、目的のビルであった。

入り口を抜けた裕子は、通知ハガキに描かれている社内図を頼りに、人事部を探す事にした。

ところが、社内図では人事部となっている部屋は実際に行ってみると【給湯室】であった。

すると、給湯室の奥から50歳ぐらいの男性が出て来て、裕子に向かって声を掛けてきたのである。

男性「あ、もしかして‥上谷裕子さん?」

裕子「はい、そうです。上谷です」

男性「どうも、初めまして‥人事部長の“陣字ブチ夫”です」

どうやら、この男性が人事部長であるらしい。

ブチ夫「さあ、取り敢えず、奥の人事部へ」

促されるまま、部長と一緒に給湯室の奥へ進むと、最奥部は入り口より少し広くなっていて、どうやら、その6畳ぐらいのスペースが【人事部】であるらしかった。

いやはや、給湯室の奥に人事部がある会社も珍しい。

裕子がそんな事を思っていると‥

ブチ夫「いやあ、昔はね‥ビルの全フロアがうち会社だったんだけど、業績の方がなかなか厳しくて‥で、今は飛び飛びで使っている感じで‥あ、取り敢えず座ってチョンマゲ」

何だか業績が上がらないのも頷ける。

だが、背に腹は代えられない。

何社も面接を受けた末に届いた、唯一の採用通知である。

(どんな会社でも、ここで頑張るしかないんだわ!)

裕子は決意も新たに、瞳の奥で炎を燃やした。

と同時に

ビシャッ!!

裕子の顔にコップの水が掛けられた。

ブチ夫「あ、ゴメン。なんか炎が上がってたからさ‥火事はマズいんだ。このビル、古いから」

裕子「ああ、すみません。気がつかなくて‥今後は気をつけます」

 
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