話題:(´・ω・`)ショボーン
 

都会の片隅、少し冷たい風が吹き抜ける路地裏で、男は独り思っていた。


都会を流れる時間は、いつも足早だ。

つい昨日までは昨日だったのに、今日はもう早くも今日になっている…こんな調子では明日には恐らく明日になっている事だろう。

アンバリービボーな‥いや、アンボリビーバー‥ビーバー?ビーバーエアコンか?‥或いは白熊エアコン‥いや、なんか違う。さては、ビバリーヒルズコップだったか‥いや、デイドリームビリーバーか‥あ、もしかしてビビデ バビデ ブー?

ふぅ‥

苦手な英語を使うのはよそう。

とにかく、“信じられない”ぐらい時間が速く流れている。まあ、そういう事だ。

いったい、時がこんな速さになったのは何時頃からだろう?

思えば、昔の時計は今の時計より、針の回転する速度が遅かったような気がする…特に電池の切れかかった時計などは、誰の目にも明らかな程、針がゆっくりと回っていた。

やはり、時間は毎年僅かずつながら確実に速くなっているのだ。

幸いにも今はまだ、今日は今日の中にすっぽりと収まっているが、このまま更に時間の速度が上がり続ければ…【今日の昼には明日の夜がやって来る!】…そんな不可思議な現象が起きる可能性だってあるのだ。

いや…

男はそこで、自らの思考を振り払うように頭を振った。

今の男には、もっと他に考えるべき事があるのだ。

勿論、男はその事を理解している。しかし、男は迷っていた。それで先程から、こんなクニャラポンな路地裏で足を止め、思考を巡らしていたのだった。

今ならまだ間に合うかも知れない…

あしたまにあ〜な…

そう、今ならまだ取り戻せる。

さかさ…

違った。

しかし…

今更俺に、どういう顔で、のこのこと店に引き返せというのだ。

俺は‥【木ノ葉のこ】ではないのだ。

しばらくの逡巡の後、男は諦めて路地裏を後にした。

なに…

紅生姜など無くても牛丼は牛丼だ。

一度店を出た後、わざわざ紅生姜を取る為だけに戻るなど、男の持つ美学が許さなかった。

男には自分の世界がある。例えるなら空を翔ける一筋の明太子(或いは、流れ星)。

遠ざかる牛丼屋。

背中で泣いてる男の美学。