話題:加工写真


地図にない何処かの町の片隅。薔薇線にぐるりと取り囲まれた西洋屋敷の一室で、老人が薔薇の機械を完成させたと聞いて、私はインタビューを取りに彼を訪ねてみる事にした。

果たして、私が通された古めかしくて少し埃っぽい部屋には、今まで見た事のない不思議な形をした機械が置かれていた。


老人「これが完成した薔薇の機械です。正確には白薔薇∞臨界製造機と云うのですが」

そう云われても‥私には全く理解できないのですが‥。

老人「いや、理解など出来なくて良いのです」

それは、どういう意味なのでしょうか?

老人「白薔薇の貴婦人の吐息は、甘いくせに何故か透き通った不思議な香り‥それが意味です」

スミマセン。余計判らなくなりました。

老人「ですから、それでいいのです」

(参ったな‥)

で、それはいったい何をどうする機械なのでしょうか?

老人「貴方」

はい。

老人「子供の頃、薔薇の棘をで鼻の頭に唾(つば)でくっ付けて怪獣の真似をした経験、ありませんか?」

ああ‥そう云われれば‥‥あります。

老人「それでは、薔薇の形をした角砂糖が何故だか特別な物に思えて使うのを躊躇った経験、それはどうですか?」

それも‥あります。

老人「その薔薇の角砂糖を他の誰にも使われたくなくて、こっそりポケットの中に隠したまま、その事を忘れてしまい、気が付いた時にはポケットの中が蟻だらけになっていた‥それはどうですか?」

いや、それはありませんけど‥。

老人「つまりは、そういう事をする機械なのです」

ますます意味が判らなくなって来ました。

老人「薔薇の棘を鼻の頭に付ける事。薔薇の形の角砂糖を大切に取って置く事。貴方は、その事に何か理由や意味があると思いますか?」

いや、それは‥。

老人「要するに白薔薇∞臨界製造機は、そういう事象を反復横跳びさせ続ける“心のスポーツテスト鏡”なのです」

心のスポーツテスト鏡!!!‥‥って何ですか?

老人「では、スイッチを入れてみましょう」

お願いします。


薔薇き薇薔薇薔薇薔薇
薔薇薔み薔薇薔薇薔薇
薔薇薔薇は薇薔薇薔薇
薔薇薔薇薔バ薔薇薔薇
薔薇薔薇薔薇ラ薇薔薇
薔薇薔薇薔よ薔薇薔薇
薔薇薔薇り薇薔薇薔薇
薔薇薔美薔薇薔薇薔薇
薔薇し薇薔薇薔薇薔薇
薔い薔薇薔薇薔薇薔薇



これは‥どういう意味なのでしょうか?


老人「つまりは‥そういう意味なのです」


《終わり》。


◆追記にプチこぼれ話

 
 
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