話題:妄想話

その日…

若い樵(きこり)の男は、いつもの様に独り森の中で朝から木を切り続けていました。

そうこうしている内に、お昼になったので、樵はお弁当でも食べようと、これまた、いつもの様に、森の中にある泉に行き「ウイショ」と切株に腰をおろしました。

ところが!

持っていた鉄の斧を足元に置こうとした時、樵はうっかり手を滑らせてしまい、大切な斧を泉の中へ落としてしまったのです!

泉に落ちた斧は、みるみるうちに水底に沈んでゆけ、あっという間に見えなくなりました。

ハァ‐‐‐

樵はすっかり困り果て、ただただ溜め息を吐くばかりです。

斧は一つしか無いのです。これでは明日から仕事をする事が出来ません。


樵は途方に暮れながら、泉を眺め続けました。

すると…

泉からキラキラと眩いばかりに輝く光のミストが立ち昇ったかと思うと、その中から美しい女神様が現れたのでした。

呆然とする樵に向かって女神は言いました。

女神『ゴメンナサイ‥ちょっとそこのバスタゥウェル取って頂ける?』

樵「バスタオル‥の事ですか?」

樵が女神の指差す方を見ると、何時の間にか、切り株の上にお洒落なタオルが置いてあるのが見えした。

樵は手を伸ばしてバスタオルを女神に渡しました。

女神『ほら、ずっと水の中に居るからさあ‥体がびしょ濡れになって大変なのよ』

女神は体を拭きながら、樵に話しかけて来ます。


女神『それで、何か御用かしら?』

樵は、自分が斧を泉の中に落としてしまい困っている事を正直に打ち明けました。

すると‥

女神『あらまあ!』

女神は、衣服の中から四角い箱を取り出しながら言いました。

女神『おめでとうございま〜す♪』

樵「えっ‥何がですか?」

女神『貴方は記念すべき、この泉に物を落とした【1万人め】の人間なのよ♪』

樵「1万人!?‥そんなに皆、物を落としているのですか?」

女神『ええ。と言う事で…粗品のボックスティシューを贈呈しま〜す♪』


粗品が箱ティシューとは、まるでスーパーの開店記念です。

しかもずっと水の中にあったので、ぐしょぐしょに濡れてしまっています。

それでも、無碍にするのも失礼です。樵は作り笑顔で粗品を受け取りました。

樵「それで…肝心の斧なんですけど…」

女神『貴方はラッキー池田に次ぐラッキーマンです♪』

樵「はいっ?」

女神『普通なら、この先は【金のオノ】→【銀のオノ】→【ヨーコ・オノ】という流れになるのだけど…貴方は記念すべき1万人めだから、特別に選択肢を増やしてア・ゲ・ル♪』

樵「いえ、そこまでして頂かなくても‥私が落としたのは普通の鉄の斧ですから」

しかし女神は、自分の両耳を手でふさぎ、樵の声が聴こえないフリをしながら言葉を続けたのでした。

女神『1万人めだから‥100マス×100マス=10000‥1万チャンスにしましょう。うん、それが良いわ♪』

樵はさっぱり意味が判らず、仕方なく女神に尋ねました。

樵「1万チャンスって何ですか?」

すると、またもや泉からキラキラした光が立ち昇り、今度は大きなパネルが現れたのです。

パネルには、数字と記号が こんな感じで描かれていました。

――――――――

123………100
〇〇〇………〇

   の

□□□………□
123………100

――――――――

女神『〇の□。上の〇と下の□には色んな言葉が入っているの。上手く行けば〇鉄の□斧が当たるかも♪ウフフ♪』

なるほど。つまりは、百×百で、合計1万通りの組み合わせになる訳です。

泉に落ちた物の個数がちょうど1万個ですから、これは納得の行く展開です。

 
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