*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋-完結・後編-』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
一番最初なので
話題:創作小説をアップします。
次から、『純血の殺し屋』の完結・後編です⇒
story.1:『空白』
『律!』
そう言って、阿岐名葉月がいつものように俺に抱き付こうとしてきた。
阿岐名は遠慮なく、後ろから俺に抱き付いてきて、俺の頬に自分の頬を擦り付けてくる。
……またコイツは、一目もはばからずに。
俺は少し呆れながら、阿岐名の腕から逃れて先を歩いた。
阿岐名は俺の後ろを犬みたいに尻尾を振って付いて来る。
阿岐名:「律っ!」
その時だった------------阿岐名が急に俺の手に自分の手を重ねてきた。
水嶋:「!な、何すんだ!人前だぞ!」
俺がそう声を上げると、阿岐名はまじまじと顔を近付けて来て言ってきた。
阿岐名:「律……まさか忘れたのか、"あの日"の約束!」
水嶋:「あ、あの日…?」
俺がキョトンとした顔でそう口にすると、阿岐名が今度は前から抱き締めてきた。
水嶋:「お、おまっ…」
阿岐名:「廃倉庫の事件で俺が死にそうになった時、律が言ったんだぞ。俺が無事だったら、俺と真剣に付き合ってくれるって!」
水嶋:「え?」
俺は、その話を聞いて"あの"惨劇を思い出した。
すると、阿岐名が言う。
阿岐名:「あの時はマジでヤバイと思ったけど……俺は無事だし、若菜も元気になったんだ。
これで誰に遠慮することなく、堂々と付き合えるだろう?」
水嶋:「若菜も…無事……!」
俺はその話を聞いて、心からホッとした。
若菜が生きてて、里沙も真紀も、善も無事だった。
阿岐名も、こうして"生きている"------------。
水嶋:「良かった……みんな、無事で。本当に、良かった……っ」
俺は嬉しくて、また泣いた。
阿岐名:「くくっ!律って、実は泣き虫だろ?」
水嶋:「う、うるせっ」
俺が涙を拭っていると、阿岐名が両手のひらを俺の頬に触れてきて言った。
阿岐名:「律。幸せにする……俺とずっと一緒にいて。」
水嶋:「……お前って、何でそういう台詞を恥じらいもせず」
気恥ずかしさで俺が俯くと、阿岐名はこう言った。
阿岐名:「律だからだよ」
阿岐名は、優しい笑みを浮かべて言った。
阿岐名:「律が、俺の傍にいてくれるから……」
阿岐名は、こう続けた。
阿岐名:「会いに来てくれるから、嬉しくって。
こんなゲイな俺なのに……律は、素直でいてくれる。
俺をなんだかんだ、受け入れてくれる……」
阿岐名は、俺の目をしっかりと見つめながら穏やかに言った。
阿岐名:「だから、好きなんだ」
水嶋:「……その台詞は、前にも聞いたよ」
俺は、阿岐名を軽く突き飛ばして急ぎ足で先を歩く。
阿岐名:「律、待って!」
阿岐名はまた、俺の手に触れてきた。
俺が思い出すのは、あの事件で俺が阿岐名に言った言葉…。
俺が思い出しながら顔を熱くさせている間に、阿岐名は俺の手をしっかりと握ってきた。
水嶋:(うぅっ…)
"男に二言はない"。
阿岐名:「男に二言はないんじゃなかったっけ?」
水嶋:「!?」
俺が今まさに思い出した言葉を、阿岐名が口にしてニコニコ顔で俺を見てくる。
阿岐名:「りっちゃん」
水嶋:「お前が"りっちゃん"呼びすんじゃねー!」
俺はそう声を上げてから、人差し指で阿岐名を差しながら言った。
水嶋:「いいか?約束した以上、仕方ないからお前と付き合ってやる。
…けど、ちょっとでも気に障ることがあったらすぐに別れるからな!分かったか!?」
阿岐名:「………………。」
俺の我が儘な抵抗に、阿岐名は静かに優しい笑みを浮かべてから言ってきた。
阿岐名:「フラれないように、努力します」
水嶋:「っ…」
------------なっ、何だ。その底知れぬ余裕のようなものを感じさせる、"その笑顔は"。
まるで自分がガキみたいじゃねぇか。
俺がそう思っていると、阿岐名が言ってきた。
阿岐名:「早く行こうぜ。善や若菜たちが待ってる!」
水嶋:「わっ!」
そう言って、阿岐名がぐいぐい俺の手を引っ張って先を歩く。
俺は繋がれた手を感じながら、自分の前を歩く阿岐名を見た。
阿岐名はこちらの視線に気が付いて、こちらを振り向き、笑顔を向けた。
水嶋:「…!」
"あの時"は、自分の日常から阿岐名が消えるんじゃないかと焦りすぎていた。
水嶋:(でも、これからは…)
一番近くで、一緒にいれる。
俺の日常の中から、阿岐名や若菜たちが消えることはない。
この煩わしくて、楽しくて、心地のいい日常が……これからもずっと続くんだ------------そう思っていた瞬間、突然目の前が真っ暗になった。
?:「りっちゃん…!」
その呼び声に反応して、俺はゆっくりと瞼を開いた。
見慣れない天井が映った後、心配そうな顔をした実姉の法子と母親が目の前に現れた。
法子:「りっちゃん、分かる?ここは病院よ!」
母親:「先生を呼んでくるわね」
姉と母の忙しない言動の後、病院の医師が現れて、自分が拳銃で撃たれ、2ヶ月もの間眠り続けていたことを知った。
俺が眠り続けている間、善が海外へ留学したことや、若菜と阿岐名の葬儀が執り行われたことを聞かされた。
若菜……そして、阿岐名が死んでしまったことを知った------------そして、善の実父の福崎零一さんがわざわざ俺の見舞いに来て言ってきた。
善の父:「あの事件は、阿岐名巡査が犯人グループを発砲したことがきっかけで大事になったと、里沙ちゃんたちから聞きました。」
善の父親は、こうも言ってきた。
善の父:「君はたった一人で、善や里沙ちゃんと真紀ちゃんを守った。それは評価に値する。
……君さえ良ければ、これからは警部補として県警に貢献して頂きたい。」
善の父親は、俺の肩に手を置いてこう言った。
善の父:「君の復帰を心から待っています。」
善の父親はそう言ってから、病室を出て行った。
水嶋:「------------…」
何かの間違いだ。
あの事件で、先に拳銃を発砲したのは犯人グループにいた少年だった。
阿岐名は撃っていない。
他に拳銃を撃ったのは------------。
水嶋:「っ…」
里沙と真紀に、俺が気を失う後の話を聞かないといけない。
でも何日待っても、里沙と真紀が俺を見舞うことはなかった。
水嶋:「ちくしょう…っ」
俺はベッドの上で膝を抱えながら、悔しくて泣いた。
阿岐名は、何もしていない。
でも里沙と真紀がそう証言している以上、俺が一人で騒いでも何も誰も動いてはくれない。
『------------律』
水嶋:「う…うわぁっ……」
涙が止まらなかった。
俺は何も出来なかった。
あの事件以降、里沙と真紀、そして善とも疎遠となってしまい、俺の日常から阿岐名がいなくなってしまった。
水嶋:(もうこんな思いは……したくないっ)
なら、警察官を辞めるのか。
水嶋:(いや、ダメだ!)
自分の記憶が正しければ、善はあの時、罪を犯している。
罪を償うことなく、海外へ渡ってしまった善を自分が救ってあげなければならない。
もう二度と、こんな悲劇は産んではならない。
"仲間"を死なせてしまっては、絶対にならない。
水嶋:「俺は、辞めない」
------------俺は退院後、すぐに警察官として石塚さんや沢田透真が所属している県警で復帰した。
この17年間、組織の上下関係という壁が邪魔をして、思うように事件を解決することが出来なかった時もあった。
"あの事件"の、最後の阿岐名の姿を思い出すたびに自分の無力さに気持ちが沈んだ。
阿岐名と若菜の命日は、決して忘れたことはなかった------------槐事件が始まるまでは。
------------To be Continued...