17/12/15 21:48 (:読み終わった本)
  アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ』ネタバレなし感想

海辺の丘の上の屋敷で金持ちで寝たきりのお婆様が酷い殺され方で発見される。

屋敷にはお婆様の養子テニスプレイヤーのリア充ネビルが赤毛のゴージャスなアホ嫁と滞在中。
何をトチ狂ったかネビルはかつて自分が今嫁と結婚した際に捨てた元嫁の儚い系美人オードリーも鉢合わせさせていた。
『あんな事あったけど二人とも仲良くなるよね☆』
と。そんなわけないのに。
ゲス不倫まっしぐらのネビルの夫婦、何を考えてるか分からない元嫁。
オードリーを密かに好きで告白しにきた幼馴染の青年、ゴージャス今嫁と友達と言い張る南米風ジゴロのちゃんにー。
お婆様の屋敷で働いてるオールドミスの美人さん。

どれもこれも怪しい人間が一箇所に集まり、ドロドロ昼ドラかと思えば…それも犯人の計算のうちだった。

老弁護士は語る。推理小説は殺人事件から始まるが、本当は殺人事件は結果にすぎない。
殺人を目指して様々な人間関係や物事が複雑に関わり合って終わりへ向かい、やがて結果、すなわち人の死ぬ時間ゼロ時間へ到達すると。

相変わらず関係者の誰もが怪し過ぎて、今回も犯人が分からなかったです。
今まで数少なく読んだ中のクリスティーの犯人は横溝正史や金田一少年の犯人と違って、動機がクズばかりなんですが、今回のヤツも負けず劣らずのガチクズでした。
ガチクズの上にヤツは…あぁああ嫌だぁ、こういうヤツ、当時の人は慣れてないから驚いたでしょうね。
犯人が分かってから、それまでのドロドロ昼ドラ展開の意味を思い返したら背筋がゾッとしました。

このお話では、頼りになるラブリーおじさん(しかし中身はジャガー並みに恐ろしい)ポアロも、お婆さんは何でも知ってるのミス・マープルも登場しないので、終盤までいまいち頼りにならず不安な気持ちでいっぱいでしたが、見終わると探偵役がこの人で良かったと心底思えるように。
めっさいい人なのよ。

犯人の救いようがない狂気ぶり、老弁護士さんが意味ありげに語るある人物の過去の恐ろしいエピソード、どちらも非常に恐ろしかったです。

毎回このハヤカワ文庫のクリスティーシリーズの表紙は、作中で関係があったアイテムがお洒落にデザインされてるんですが、この『ゼロ時間へ』のエレベーターは、見終わってから改めて見ると嫌ぁあああ…となってしまったり。
(サスペリア2終盤みたいなギャー!とまではいかないですが)

大変怖面白かったです。
単細胞脳みそなのでクリスティーは、怪しい人間ドラマと犯人の真の狙いが何かを楽しむものです。

またしても『アクロイド殺し』と同じように読了後の興奮が冷めないので、先程クリスティーをつい3冊も借りてきたくらい。
オリエント急行は映画の影響かまだ借りられっぱなしだから他のにしました。
次はどれを読もうかなぁ…。
(〃ω〃)

話題:最近読んだ本


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