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44.君がくれた夏

時間は戻ってはこない
だけどそれが時に背中を押してくれる





「あ〜も〜どうしよ」

「なぁちゃん落ち着いてよ〜」



朝からずっとこの繰り返しなのは
昨日かずみんとの電話で、悩んでる私に
明日朝からなぁちゃん家行くねって
来てくれたのにあまりにも優柔不断すぎて
今はかずみんの方が泣きそうで



そもそもこうなったのも、
夏休み入る前に突然橋本くんに
花火大会誘われたからであって、
可愛い浴衣なんて持ってないし
お母さんにも恥ずかしくて言えないし


「なぁちゃんはなに着ても可愛いよ!」

さっきからずっと慰めてくれてるかずみんも
ほんとは友達と花火大会に行く準備したいのに
ななのために手伝ってくれてる


「よし、ななこれにする」


前にちょっとだけ聞いたことのある
橋本くんが好きだって言ってた青の浴衣
確か部活のチームカラーが青だったかな?


「うん、やっぱりなぁちゃんは可愛い」

「ふふ、ありがとう」

「橋本くん喜ぶよ〜〜」

「も〜やめてよ〜」


ほんとはどんな反応されるのかも
どう思ってくれるのかも
気になってはしまうけど
そんなこと考えてる余裕もなくて


「あ、なぁちゃん、もうすぐ時間だよ!」

「え、あ、うん」

「頑張ってね」

「ありがとう」



夏休み入ってからずっと考えて悩んで
でもその瞬間はもう目の前で
久しぶりに会うその人の顔を思い浮かべて
口元が緩んでしまうのは少しでも会いたいと
思ってくれてたらいいなって期待してるから












きっと悩んだ時間は無駄じゃない
そうあなたが言ってくれる気がして

43.君がくれた夏

きっかけは単なるきっかけだった
だけどそれが時に大きくなる





「翔〜夏休みなにすんの?」



「部活あるからな〜」




「なぁ〜花火大会行こうよ〜」




「いや、男二人は嫌」






クラスのみんなももうすぐくる夏休みに
もう夏休み気分全開で
きっと俺は部活に明け暮れて
今年も夏休み終わるんだろうな〜





「まぁ翔は西野と行くか」



「いや、誘ってないし」




「は?お前バカなの?もう西野誰かに誘われてたりして〜」




「お前応援してんのか茶化してんのかどっちかにしろよ」






そりゃ誘いたくないわけじゃないけど
西野は人混み嫌いそうだし
あんまり興味なさそうだし



でもほんとは断れるのが怖くて
誘えない自分に情けなくて




「あ、そう言えば花火大会のスペシャルゲストふなっしーだってよ」




「千葉でもないのに?」



「なんかわかんねぇけど」






まぁでも航太の言う通り
もう西野は誰かに誘われてるかもしれないし
花火大会の日に予定があるかもしれない




でも考えれば考えるほど
やっぱり聞くだけ聞いてみようかなって







「なぁ、西野」


「ん?」



「夏休み暇?」



「え?うん、特に用事ないけど」



「あのさ、よかったらなんやけど、もし、よかったら花火大会行かん?」




「え?あ、え、ななと?」



「あ、いや、空いてたらでいいんやけど、ゲストふなっしーらしいし、もし空いてたらで全然いいから」





「ふふ、なな人混み苦手やけど、ふなっしー好きやから行く」



「え?そこ?」






返ってきた返事には予想外だけど
西野らしいなって思うのと
ただ一緒に行ける喜びだけで
こんなに嬉しくなるのは初めてで




自分の気持ちばかりで君が最後まで
悩んでたことを知らなかった。

この夏最大のイベントを目の前に。

42.君がくれた夏

好きなんて気づかんかったら良かった
そう思うのも好きな証だからかな








橋本くんを好きだと気づいてから
今まで気にしてなかったことまで
一つ一つ気になってきて

今日だって普通にしてるつもりでも
毎朝白石さんと登校してるの今更知って
朝から上手く笑えてないのがわかる








前に橋本くんは白石さんのこと
ただの幼馴染みって言ってたけど
"ただの幼馴染み"には見えなくて







やっぱ白石さんには敵わないなぁ〜








「なぁちゃん、今日ずっと険しい顔してる」



「え?あ、うん、ごめん」




「私に謝らなくていいよ〜」






かずみんはいつも私を笑顔にしてくれるけど
今日ばかりはちょっと笑えなくて
自信も余裕もない自分には笑えてくるのに。






「なぁちゃんはわかってないな〜」




「え?なにが?」





「いや、いつかわかるよ」






いつもかずみんはななより先を見てて
答えを知ってるかのように、
でも自分で見つけるまで教えてくれなくて
かずみんみたいな先生が増えたら
子供たちの夢も広がるだろうな






「西野〜」




今日初めてその人に呼ばれた名前に
いつもより過剰に反応しちゃったけど



「どうしたん?」




「昼飯食うから机貸して」



「あ、うん」





そう言いながら友達と机を合わせて
ご飯を食べてる姿に笑っちゃったんだ。
でもそれだけじゃなくて、
自分の席じゃなくてわざわざ
ななの席に座って食べてる橋本くんに
後から理由を聞いたら

知らない男子に使われるの嫌かな?ってって



きっとこういうとこも好きな理由なんだなって思って、ニヤニヤしてる自分がわかる。





知らなくていいこともたくさん見えるけど
知りたいことの方が多いから



41.君がくれた夏

恋はいつだって近くにあったのに
見逃していく自分に嫌気がさす






「なぁちゃん帰ろう?」




「あ、うん、待ってな〜」





いつも帰りは橋本くんに挨拶して
帰るのに今日はもう姿はなくて
密かに楽しみにしてるんはななだけなんや
って思うとちょっと切なくなる







「なぁちゃんどうしたの?元気ないね」



「ううん、行こう」





かずみんに心配かけんようにしようって
笑ったけど私を見てかずみんも
困ったように笑ってたから
きっとかずみんには何も隠せない。






「今日たこ焼き食べて帰ろうよ〜」



「かずみんほんと食べるよね」




かずみんと話ながら下駄箱に向かってたら




「あ、いた」



「え?」




白石さんと並んで歩く
見慣れた後ろ姿が見えて
なんかもうなんとも言えん感情になることに
最近嫌気がさしてきてたから




「なぁちゃんどうしたの?」




「んーん、たこ焼きいっぱい食べてやる」





見てなかったことにしよう
だってお似合いすぎて何も言えんし
なんでなながこんなに怒ってるんかも
わからんし、もう自分が嫌や。








「なぁちゃん?可愛いお顔が怖いよ?」




「え?ごめん、なんか言った?」




「あは、なぁちゃんはね、嫉妬してるんだよ?」




「嫉妬?ななが?」



「うん、橋本くんと白石さん見て嫌だなって」




「でもななには関係ないもん」





「関係ないのに怒ってるでしょ?」






「怒って、、、、ないもん、、」




「なぁちゃんは今嫉妬してるんだよ」






かずみんはいつも引っ掛かる言葉を
残していくけどななには理解出来んくて
でもなんとなく今回は当たってる気がして






でもなんでななが嫉妬してるんやろ?








「ねぇ、かずみん、ななって変?」




「ん?変じゃないよ〜」




「だってすぐ嫌になる」




「そういうもんだと思うよ〜」




「ねぇ、かずみん、ななはなんで怒ってるん?」





「じゃあ、なぁちゃんに問題ね」




いきなり始まったかずみんのクイズに
ちょっと笑ってしまったけど





「なぁちゃんは今誰に会いたいですか?」





誰に会いたい、、、、なんで?




「ん〜じゃあ今誰の状態を気にしてますか?」




さっきまで笑ってたかずみんが
真剣な顔して言うから
ななも真剣に考えてみるけど
一番はやっぱりあの二人今なにしてんやろ?
って気になってて、でも気にしてなくて
このやりとりが自分の中で何回行われたか
わからんくなってきて





「なぁちゃんが今思い浮かべてる人はなぁちゃんにとって大切な人だと思うよ」







いつものかずみんのように優しく笑って
促すような言葉がループしながら入ってきて
大切な人、、、、大切な人、、、、
大切な人?










またね。って挨拶出来るかな?って
いつもソワソワするのも
今日は忘れ物してないかな?って気にするのも
授業中寝顔を見ながら笑っちゃうのも

ななにとって橋本くんは大切な人だからなんだ。









もう一度かずみんを見ると慌てて謝ってきて
知らず知らずに流してた涙が
自分のせいだと思ったみたいで
それがおかしくて二人で笑って




かずみんとは違う意味の大切なんて
知らなかったから初めての感情で
でも橋本くんには白石さんがいるから





ななはそっと見守ることにしよう









恋の力は不思議なくらいに
今まであったモヤモヤを全部吹き飛ばして
背中を押してくれるかのように
一瞬だけ風が吹いた。



40.君がくれた夏

いつかこの日がくるとわかってたけど
いざそうなるとやっぱり怖くて








「麻衣、帰ろう」



「あ、うん」




久しぶりにかけるから誘われて
嬉しいような複雑な気持ちで
だってかけるから誘うときは
決まってなにか話があるときだから








「今日部活は?」




「あ〜休みだよ、試合終わったから」




「頑張ってたもんね〜」






かけるは昔から一つのことにしか
集中して出来ないタイプだから
大会までの間夜遅くまで
練習してるのが想像ついて
なんでもわかるんだなって改めて思った







「麻衣はさ、好きな人いる?」





「え?急にどうしたの?」





なんとなく、なんとなくだけど
そんな話なんじゃないかと思ってたから、、





「ん〜いるよ」




「え?いんの?」





かけるだよ。って言えたらいいけど
今はかけるの言葉を聞こう






「どうして?」




「俺、好きな人できた」






わかってたよ。わかってたけど、
かけるの口から聞くともう
自分に言い訳出来なくてなって
苦しくて泣きたくてほんとに
なんでかけるなんだろうって思ってしまうから







「え、珍しいねかけるの恋」



「ん?そう?そうかもな〜」





かけるが今振り向いたら
きっと心配させる顔をしてる気がして
少し間をとって歩くけど
かけるはいつも絶妙な距離を保ってて
これもまた一緒に過ごした月日を感じる







「かけるの好きな人ってどんな人?」





「ん〜なんかすごく落ち着く空気を持ってる人かな。あと守りたくなる人?」





「そうなんだ〜」






かけるの中には私なんて
これっぽっちもなくて
その人を思い浮かべながら話すかけるが
今まで見たことないような優しい顔してて
あぁ、もう私じゃ無理なんだ。って








「好きな人ってだれ?」





「ん〜、、、西野」







絶対言うなよ。って笑ったかけるが
傷だらけになった心に塩を塗るように
塞がらない穴を作っていく。






ねぇ、かける、私はどうしたらいい?





言葉にならない言葉が
迷子になってしまわないように







一つのことしか見えないあなたは
誰かを想うのに精一杯で
それでもあなたが笑ってくれるなら
私の想いは浄化されていくの







これが私の愛の形なんだ。
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