18/12/13 22:48 (:単発/妄想(ジャンル無節操))
  尾形百之助<秘湯篇>
話題:妄想を語ろう
「相当山奥の秘湯だが、苦労して来ただけの事はあるぞ」


女の手を取り
足場の悪い道を行く

雪深い谷間に
立ち上る湯煙


「着いたな」


旅館の部屋は奥の間
蝋燭の灯りが

ポツリポツリと
等間隔に並んでいる

「‥荷物を置いたら温泉に行こう」


頷き、向かう


「あれ。此処って」

「言ってなかったか?混浴だぞ」


「こん、浴‥?」


「混乱するな行くぞ」


露天風呂へと向かう道‥冷えた空気が肌に突き刺さる


「俺は少し経ってから入る。寒いから先に入っててくれ」


「?‥はい」


広い露天風呂

周囲が雪にぐるりと覆われている


「温かいー‥」


肩まで浸かり
空を見上げる


「混浴って言ってたけど‥誰もいない」

まだ、そんなに遅い時間ではないのに


「尾形さん‥遅いな」


腕を伸ばして後ろを振り返る


「うわっ‥!」


居た


背後に音も無く

尾形が
湯に浸かっていた。

驚きの余り
湯から飛び上がる女

「ご、ごめんなさい‥びっくりしてお湯掛けちゃって」


尾形の額から数本の筋を作り流れる湯


「いや、俺は構わないが‥丸見えだぞ」

「!!」


勢い、湯に頭まで浸かり申し訳なさそうに謝る女


「謝らなくて良い」

寧ろ俺は役得と思っている‥敢えて言わないが


「そ、それにしても‥混浴なのに誰も居ませんね」


首を傾げながら
周囲を見渡す


「何だ。他の客が居た方が良かったのか」


身を寄せ問う


「い、いえ‥ただ不思議だなーと思って。宴会しているお客もいた様ですし‥」

もう一度周りを見る

「まぁ、折角運良く誰も居ないんだ‥。ゆっくり寛ごう」


尾形の言葉に
笑顔で頷く女


「イイ笑顔だ」


「あ、雪‥」


俺が遅れた理由


俺が他の客に<頼んだ>

皆、素直な
優しい客で良かった

「ここの旅館って」

「あぁ、飯も期待出来るぞ」


秘湯の夕餉

0




*#

[top]
-エムブロ-