03:08 2020/6/7
話題:これから読む本

●『緋文字』 (岩波文庫)
著作:ナサニエル・ホーソーン/訳:八木 敏雄
胸に赤いAの文字を付け、罪の子を抱いて処刑のさらし台に立つ女。告白と悔悛を説く青年牧師の苦悩……。厳格な規律に縛られた17世紀ボストンの清教徒社会に起きった姦通事件を題材として人間心理の陰翳に鋭いメスを入れながら、自由とは、罪とは何かを追求した傑作。

『文豪ストレイドッグス』でナサニエル・ホーソーンを基にした同名の人物が登場している。その彼の異能の名が『緋文字』なので、実際の作品はどのような小説なのか気になった…というのが率直な理由。これからじっくりと読んで行くのが楽しみだ。

●『死都ブリュージュ』(岩波文庫)
著作:ジョルジュ・ローデンバック/訳:窪田 般彌
沈黙と憂愁にとざされ、教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ。愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィア-ヌがそこで出会ったのは、亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった。世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人ローデンバック(1855-98)が、限りない哀情をこめて描く黄昏の世界。

愛読書『怖い絵』の中で偶然知った作品。ブリュージュはベルギー北西に位置する州都で、『tabiyori』によると『町まるごとが世界遺産といってもいいほど美しい町並みのブリュージュにひとたび足を踏み入れれば、まるで中世の世界に迷い込んだかのような錯覚に陥ります。』との事。そんな町を舞台としながら、『死都』と冠した著者の意図とは果たして何だろうか。

●『小僧の神様』(岩波文庫)
著作:志賀 直哉
志賀直哉(1883-1971)は、他人の文章を褒める時「目に見えるようだ」と評したという。作者が見た、屋台のすし屋に小僧が入って来て一度持ったすしを価を言われて置いて出て行った、という情景から生まれた表題作のほか、「城の崎にて」「赤西蠣太」など我孫子時代の作品を中心に11篇を収めた、作者自薦の短篇集。

『小僧の神様』は学生の頃、講義を通して知った作品。昔の話なので記憶は朧気なものの、ほのぼのとした作風ながら、大切な事を読者へ訴え掛けて来る印象があった。

●『掌の小説』(新潮文庫)
著作:川端 康成
唯一の肉親である祖父の火葬を扱った自伝的な『骨拾い』、町へ売られていく娘が母親の情けで恋人のバス運転手と一夜を過す『有難う』など、豊富な詩情と清新でデリケートな感覚、そしてあくまで非情な人生観によって独自の作風を打ち立てた著者の、その詩情のしたたりとも言うべき"掌握小説"122編を収録した。若い日から四十余年にわたって書き続けられた、川端文学の精華である。

『小僧の神様』と同じく、こちらも講義で知った作品。川端康成はノーベル文学賞を受賞した作家で、『雪国』や『伊豆の踊り子』が代表作だという事位しか把握しておらず、彼の著作を読んだのはこれが初めて。講義に採り上げられたのは『屋上の金魚』だったと思う。

●『汚れつちまつた悲しみに……』(角川文庫)
著作:中原 中也
「汝陰鬱なる汚濁の許容よ、更めてわれを目覚ますことなかれ!」日本の近代詩史に偉大な足跡を残した夭折の天才詩人中原中也。30年の生涯で作られた詩の中に頻出し、テーマとなることが多かった3つの言葉、「生きる」「恋する」「悲しむ」を基軸に、制作年月推定順に作品を精選。代表作「汚れつちまつた悲しみに……」ほか、今なお心を揺さぶられる詩篇の数々から、中也の素顔を浮かび上がらせるまったく新しいアンソロジー。

『文豪ストレイドッグス』との提携で、ポートマフィア幹部の中原中也が表紙になっていたのが目に留まり、購入してしまった…。というのも理由に当て嵌まる。しかし、最大の理由は祖父から譲って貰った中原中也の記念館の館報に、私が尊敬する宮沢賢治との特別企画展が開催されたという記事が掲載されていた為、彼にも何故か不思議な縁を感じていた事にある。なので、この機会に中原中也が綴った詩の世界に飛び込んでみようと思った次第だ。

●『マリー・アントワネット』(角川文庫)
著作:シュテファン・ツヴァイク/訳:中野 京子
女帝マリア・テレジアの愛娘にして、フランス宮廷に嫁いだ王妃マリー・アントワネット。国費を散財し悪女と罵られ、やがて革命までも呼び起こす。しかし彼女は本来、平凡な娘―平凡な人生を歩めば幸せに生きられたはずだった。贅沢、甘やかし、夫の不能……運命は様々に不幸という鞭をふるい、彼女を断頭台へと導いてゆく。歴史が生み出した悲劇の王妃の真実を、渾身の筆で描き出した伝記文学の金字塔。

中野京子氏の翻訳による『ロココの薔薇』と謳われた王妃の伝記。今まで読んで来た世界史やそれ関連の書籍では掻い摘んだ形でしか載せていないので、この本で彼女の生涯が如何なるものだったかを詳しく振り返りながら、知られざる歴史の裏側を紐解いて行きたい。

●『未踏召喚://ブラッドサイン』(電撃文庫)
著作:鎌池 和馬/イラスト:依河 和希
「くそっ、まさかこんな所であれを聞くだなんて」『神々のさらに奥に潜んでいた者』さえ自由に呼び出す召喚儀礼。それを扱う最新鋭の召喚師の中でも一等の実力を持つ少年がいた。『不殺王』、城山恭介。その最強の少年召喚師が抱える致命的な弱点は唯一つ。少女から発せられる『呪いの言葉』、たすけて―。死の淵に立たされた少女、冥乃河彼岸の言葉を受け止めた恭介は、召喚師三大勢力が激突する街に身を投じる!

友人が教えてくれた、『とある魔術の禁書目録』の原作者によるライトノベル作品。映像化はされていないが(YouTubeで配信された『とある魔術の禁書目録』10周年完全新作アニメーションPV映像には、恭介達がちらっとだけ登場する)、世界観や物語の描写が斬新で読み進めるとこれが面白い。

【欲しい本】
●『富嶽百景・走れメロス 他八篇』(著作:太宰 治/岩波文庫)
●『文庫 少年の日の思い出』(著作:ヘルマン・ヘッセ/草思社文庫)
●『戯曲 毛皮のマリー 血は立ったまま眠っている』(著者:寺山 修司/角川文庫)
●『萩原朔太郎詩集』(著作:萩原朔太郎/編纂:三好 達治/岩波文庫)





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