2013/6/29 Sat 22:10
時間稼ぎ2


話題:創作世界披露会及び創作メモ帳
今度は海賊の話でのサブメンバー、ロバーツ海賊団のキャラ過去話。




キースが語る、キースとスノウがロバーツに拾われて間もない頃の話。




ちゃぷちゃぷと水の音だけが聞こえていた。
ここはある海賊船の船尾。
俺、キースは双子の弟スノウと一緒に訳ありの家出をしていた。
外は細い三日月と誰かが光る砂をばらまいたかのような星の群れ。
港から少し離れた所で停泊しているのだが、俺の心は休まらない。

「スノウだけは死んでも守らなきゃ…」

欄干をぎゅっと握った。
冷えていたそれが俺の手の温もりを奪う。
少しだけ体温が下がったような気がした。

「なんや、お前まだ起きとったんか?」
「っ!!」

とっさに腰にあるナイフを構える。
振り返った先には船内のドアから此方へ来ようとしているロバーツ、この船の船長がいた。

「別にいいだろ!」
「えーと、お前はどっちやったかな?うーん、ちょっと待ちや、今思い出すから」
「……」

ロバーツは額に指を当てて考えている。
僕は当てられるはずがない、と心の中で思った。
僕たち双子はよく似ていて、父親ですら間違えるのだから。
警戒は解かないが、父親の顔が脳裏に浮かび、複雑な気持ちになった。
父親の事は嫌いじゃない、むしろ尊敬している。
だけど、父親は弟のキースを人質に俺に仕事をさせる。
それが嫌だった。

「キースや!!」
「ぶー」

まぐれだ。
そうに決まってる。

「そんなはずない!お前はキースや」
「なんの根拠でそう言うのさ?」
「スノウは少しタレ目、キースは少し釣り気味、それにスノウは眉間に皺がない」

どや顔で距離を詰めてくる。

「おうとるやろ?」

顔を覗きこまれる。
何なんだ、この男は。
片目の潰れた、派手な…間抜けではないのか?

「……あってるよ」

呟くと、ロバーツはにっこりと笑った。
ナイフを下ろす。
喰えない男だ。

「まだ数回しか顔合わしてないのに、化け物かよ」

ため息混じりに心の声が出てしまう。
そしたらガシガシと頭を撫でられた。

「ちょ、痛っ、やめろ!」
「はっはっは!!!わいが乗せると決めた奴や、覚えるに決まっとるやろ」

数日前の、あの雨の日を思い出す。
僕達2人は死にそうなぐらい傷だらけでぐっしょりで、スノウは熱を出して今もまだ本調子ではない。

「いいの?僕らを船に乗せて」
「お前らこそ良かったんか?親だけやのーて、政府や、他の奴等からも狙われるようになんねんで?」
「……」

ここはボランティアでもなんでもない。
海賊船だ。
海賊は捕まれば晒し首にされ、火炙りにされ、生きたまま鳥の餌にされる。
大人も子供も関係ない。
今ならまだ引き返せる、ロバーツはそう言いたいのだろう。

「僕は海賊だ」
「わかった。仲間は最後まで守る!!お前の敵はわいの敵や」

一瞬心が軽くなった気がした。
だが、すぐにハッと我にかえる。
もともとこの船に乗ったのは緊急事態だった事に加えて、団員が多かったからだ。
人に紛れてこっそりと隠れているつもりだった。
船長に目をつけられ、この派手な軍団が、派手にうちの家を刺激してみろ、すぐに見つかってしまう。

「わかったならあんまり僕達に関わらないでくれる?その方が嬉しいんだけど」
「え?」
「乗せてくれた事には感謝してるよ。邪魔はしないからそっとしておいて」

ロバーツが何か言おうとするのを遮って、僕はそう放った。
そう、これでいい。
これで僕とスノウの暫くの安全が確保された。
ヤバくなったらまた逃げればいいのだ。
家から逃げたように、また2人で。

「じゃ、」
「ちょい、待ち」

ロバーツの制止を振り切って僕は船内へと続くドアを駆け抜けた。
後日嫌がらせなほどロバーツが僕らの前に現れるだなんて知りもしないで…。













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