突き刺さるはセミの鳴き声7
突き刺さるはセミの鳴き声

GPSが指し示した場所は、俺たちが通っている高校の、旧校舎だった。

不自然に開かれた扉を、順番に潜っていくと、極僅かな光がある部屋にたどり着いた。

「チカコ!!!」

俺が声をかけると、中から痩身の男が飛び出してきた。

「コレクションルームには、入らないで貰えますかね!!!」

その男は、生物担当の永井だった。俺は、永井の突進をかわして、足払いをかける。

「お兄さん、そいつに」

と呼び掛けようとした刹那には、警察のお兄さんは、永井を組伏せて、背面に手錠をかけ終えていた。

「一応、現役だからな」

お兄さんは笑っていった。それから、ぽんと何かを投げて寄越した。懐中電灯だった。

「ナナミは、そこにいて」

俺は声をかけると、マコトと二人で、部屋のなかに入った。

「入るなって、言ってんだろうが!!!」

永井が、床に寝転びながら、喚いたのを無視して、部屋にはいると、そこには、8つのベッドが、病院の様に、並んでいた。ベッドには、女の子が、鎖で縛り付けられている。そして、点滴が繋がれていた。

向かって左側の、奥から二番目に、チカコがいた。

「ユウキっ」

チカコは、俺たちを視認して、顔を歪ませていた。マコトに懐中電灯を押し付けて、チカコに駆け寄る。

「大丈夫だったか?!」

チカコは、何度も頷いた。

「他の子達を、早く、病院に連れてってあげて!」

俺は、わかった、と言ってから、ドアの方を見やる。警察のお兄さんは、片手で永井を押さえ付けながら、もう片方の手を、ひらりと振った。

マコトに懐中電灯を持ってもらい、一人一人、順番に鎖をほどく。幸いにも、どの子も、ちゃんと、生きているようだった。



続 話題:SS



12/07/31  
読了  


-エムブロ-