目覚めたのは、薄暗い部屋だった。後頭部が、ズキンズキンと痛む。ずっと、同じ体勢だったようで、からだの節々も、後頭部と同様に、鈍い痛みを訴えていた。体を動かそうとすると、ジャラリ、と鎖が鳴った。
「なにこれ!!」
つい、声を出してしまう。ハッとして、口を手で押さえようとしたが、その手も、鎖に阻まれてしまった。
なんでなんでなんで!
混乱する頭に、ようやく、馴れた視界で、見えた世界は、さらに、私の混乱を助長した。
並んだベッドと、ベッドに縛り付けられた、女の子達。私は、小さく悲鳴を漏らした。それから、何とか逃げ出さなくてはと、彼女たちに声をかける。
「起きて!」
「…無理だと思う」
隣のベッドから、声が聞こえてきた。
「だ、れ?」
「サユリ。あなたは?」
「チカコ」
「サユリちゃんも、さらわれた、の?」
「そうみたい」
彼女は、サユリでいいよ、と言いながら、溜め息を吐いた。
「チカコで、七人目」
「サユリは?」
「六人目」
「他の子は?」
「生きてるけど、死にそう」
「っ……」
“死”という言葉が、余りにも、リアルに感じられて、私は言葉を失った。
「もう、寝る。っていうか、起きてると体力消耗しちゃうだけだから、チカコも、寝た方が良いと思う」
「そ、んな…」
サユリは、言い終わるなり、眠ってしまった。たぶん、本当に、摩り切れるような、感じなんだろう。
薄暗くて、ベッドに、くくりつけられて、良く見ると、点滴が繋がれている。何か変な薬でも、入れられているのかもしれないと思うと、血の気が引いた。
どうにかして、逃げ出さなくちゃと、鎖をがちゃがちゃ言わせたとき、部屋のドアが、ギィーと、嫌な音をたてて、開いた。
「おはよう。チカコちゃん」
至極、楽しそうな、幸せそうな、満たされたような、声だった。
続
話題:SS
12/07/30