突き刺さるはセミの鳴き声2
突き刺さるはセミの鳴き声

夕飯を食べ終わった後だった。電話が掛かってきた。

「はい、大宮です」
『もしもし、ユウキくん?』
「あ、はい。こんばんわ」

相手は、チカコのお母さんだった。どうかしたのだろうか。声が沈んでいる。

『ユウキくん家にチカコお邪魔してない?』
「え? 今日は来てませんよ?」
『…そう。あの子、まだ帰ってこないのよ』
「そんな…」

頭の中でぐるりと廻ったのは、梅雨明けごろから始まった行方不明者続出のニュース。

『大丈夫だとは、思うんだけど』

そう言ったおばさんの頭の中も、俺と同じように、行方不明者続出の事件が、埋め尽くしているのだろう。

「俺も友達に連絡とってみます」
『ありがとね』

俺は電話を切るなり、携帯を開いた。着信履歴はなかった。チカコの番号を呼び出してはみるが、掛かりそうもない。
吹奏楽部の面子に、順番に電話を掛けてみた。

「マコトか?」
『うん、どうかした?』
「チカコどこに居るか知らないか?」
『チカコ? 喧嘩でもしたの?』
「ちげぇよ。帰ってきてないんだって」
『ぇ、うそ』

さっきの俺と、同じ様な反応だった。動揺が隠せていない。

「まさかとは、思うけど、探してみてくれるか? 吹奏楽部の面子には、俺から連絡入れてみるし」
『じゃあ、学校の方は、当たってみるよ』
「頼んだわ」

何もなければ、それで良いのだ。けれど、どうしても、不安感が拭えなかった。



続 話題:SS


12/07/30  
読了  


-エムブロ-