「 やっぱり、夏は天の川だよねー。ゆんた、天の川の真ん中にあるのが、夏の大三角形! こと座のベガとわし座のアルタイル、はくちょう座のデネブなんだよっ」
《夏の大三角形》
「ふーん」
私はつまらなくて、素っ気なく返事をした。
久し振りに、会えるというのに、なんで、連れてこられた先は、何にもない山のなかで、星を見せられてるんだろう。確かに、ぽんが、星とか宇宙とかを、大好きなのは知っていたけど。
「ゆんた、どうかした?」
「んー、別にー」
せっかく逢えたのだから、怒るのも意味のないことだと思い直していたところで、ぽんは、私の不機嫌に気付いてしまったようだった。
「でも、怒ってる、よ、ね?」
少ししょんぼりしたぽんの、頭を撫でながら、少し意地悪をするつもりで、ニヤニヤ笑いながら、言ってやった。
「ぽんはさ、星と私の、どっちが好きなのかなー、と思って、ねー」
「……わかんない」
ぽんは、困ったように言った。私は黙って先を促す。
「だって、ゆんたは、女の子として人として一番大好きだけど、星は、そういうのじゃないから…」
私は、真剣に考えてくれたぽんに、嬉しくなったと同時に、そんな下らないことを聞いてしまった、罪悪感を感じた。
「ありがとね」
ここで、ごめん、と言ってしまっても、意味がわからない。だから、笑って、ありがとう、と言った。
「ごめんね、不安にさせて」
ぽんが、不意に、私を抱き締めた。
こういうとき、ぽんは、私より大きくて、ちゃんと、男の子だと思う。
「んー? なんで?」
「ちゃんと、ゆんたのこと、大好きだからねっ」
しっかり、私の思っていたことは、筒抜けだったようで、ぽんには敵わないなあ、と思ったのだった。
end
話題:SS
前作*
七夕
12/07/23