罪の果実
ショートストーリー

身体が鉛のように重い。目蓋は接着剤で、とめられたかのように開かない。喉はかさついていて、声も出ない。

それでも、無理矢理に上半身を起こして、洗面所へ向かう。ばしゃばしゃと、顔を洗った。ついでに、口をゆすぐ。

次にキッチンに向かって、冷蔵庫から、ペットボトルの水を取り出した。封を切って、勢いよく中身を喉に通す。

何か食べなくちゃなあ、と、冷蔵庫の中身を眺めながら思う。結局、さっと洗ったリンゴを丸のままかじった。

食べきったリンゴの芯を、ゴミ箱に放り投げ、シャワーを浴びる。

服を着替えて、仕事の時間だ。

電話がかかってくる。

『ついた』
「いまいく」

人には言えないような仕事をしているのは、わかってる。わかってはいたけど、辞められるわけがない。随分と、羽振りがいいのだから。

あたしは、眠い目を擦りながら、マンション8階の角部屋から出て、エレベーターに乗り込んだ。



end
話題:SS


12/07/23  
読了  


-エムブロ-