提灯明かりに照らされて
ショートストーリー

何だか今日は街中が騒がしい。何か、良いことでもあったんだろうか。

因みに私は、良いことがあった。今日でテストが終わった。結果は、まあ、気にしない。終わった、ってことが、重要な訳であって。

テストがあったから、早い時間に、帰れるし、いい気分なのだ。

少し後ろの方で、元気の良い悲鳴が聞こえた。何かあったっけ? 通ってきた道だから、何かあれば気付くはずなんだけれど。

振り返ろうとした瞬間、声。

「ひ、ひ、人殺しっ!!!」

人殺し? 何処にだろう。私は、冷静に首を回す。私以外には、誰もいないんだけど。

ってことは、私が人殺しなのか? どうなんだろう。目線を下げてみた。服は血が付いている。私のものじゃない。手には? 鞄の代わりに、包丁があった。

道理で身軽なわけだ。

「あははっ!!」

私は、楽しくなってきて、笑う。街中が騒がしい。お祭りのようだと思う。

足取りも軽く、すれ違った人に、包丁をお見舞いした。切りつけるだけ。刺すと、抜くのが大変だから。でも、なるべく、赤が見たいから、出来るだけ、太い動脈が流れている所を、切り裂いた。

すっかり視界が血の赤で染まった頃、鮮やかな赤が私を取り囲んだ。

警察のお出まし。

「君、包丁を置きなさい」

そんな声が遠くから聞こえた。私は、ニッコリと笑って、包丁を自分の胸に突き立てた。

全部がどことなく、赤みを帯びていて、お祭りの提灯明かりに照らされたみたいだなぁ、と思った。



end
話題:SS



12/07/07  
読了  


-エムブロ-