「おなかすいたー」
マンションの一室に、リンの気の抜けた声が響いた。
「ふーん、そ」
「酷いよー、おなかすいたのにー」
ソファーに並んだ二人は、至って静かに、喧嘩らしきものをしていた。
「はいはい」
「もー、意地悪ー。おーなーかーすーいーたーーー」
リンがトモヤにしなだれかかると、トモヤはこれでも食べてな、と、人差し指をリンの口許につきだした。
「んー、うん。頂きます」
リンはトモヤの指を、ぱくりとくわえると、甘噛みしつつ、舌を這わせた。
「それ、エロいよ」
トモヤが笑う。リンは、んー? と、行為を続けたまま、トモヤを見上げた。トモヤからすれば、それは上目遣いになる。
「俺が、リンを食いたくなるって」
トモヤはそう言うと、リンを引き剥がして、ソファーから立ち上がった。そのままの足でキッチンに向かう。
「リン、なに食う?」
「鶏の唐揚げ!」
「オッケィ。デザートは、リンだな」
トモヤは、言い切ってから、料理を始めた
。リンはソファーに転がりながら、料理をするトモヤに、バーカ、と笑いかけていた。
end
話題:SS
12/05/02