寝返りを打った時だった。冷んやりした空気が生身の身体に触れて、裸だということに気付いた。セックスしたあと、そのまま、寝たんだっけか。何時なんだろう、と思っていると、不意に抱き寄せられた。
「なぁに?」
「すき」
「ん、あたしも」
そう応えると、彼は嬉しそうに、あたしをキツく抱き締めた。そのとき、太腿に触れた熱に気恥ずかしくなって身をよじると、彼は、さらに、あたしを抱き締めた。
「シよ」
「…また?」
少し意地悪をしたくて、茶化すように言った。本当は、嬉しかった。
「また。いや?」
「嫌じゃないよ」
言うより早く、口を塞がれる。濃厚なキスが、脳をとかしていくようで、くらりとした。
情事のあと、あたしはふと、思い出して呟いた。
「あ、クッション」
今日は、クッションを買いに出かけるはずだったのだ。出かけるには、遅過ぎる時間になっていた。
「ごめん、ヤっちゃったから」
「んー、良いよ別に」
買い物は買い物で魅力的だったし、クッションも欲しかった。だけど、彼に求められるなら、それでいいかな、と思ったのはあたしだったから、別に、と曖昧に応えた。
本音は言わない。つけあがらせるのは、シャクだから。
「クッションはプレゼントしてもらうから良いよ」
「う、はい」
end
話題:SS
13/09/13