やっぱり、
ショートストーリー

別れたい、と切り出したのは彼だった。他に好きな人ができた、と彼らしくない言い訳だったけれど、私は頷いた。それは、たぶん、二週間前だったと思う。部屋の片付けをしたり、仕事を持ち帰ってきたり、友達と遊んだり。二週間、充実していて、こんなに寂しい気持ちの存在すら、忘れていた。

《やっぱり、》

今日もよく頑張った、と思いながら、缶ビールをあけた。缶から直接、喉に流し込む。ゴクリと喉がなった。

さて、あいつに連絡しないと、そろそろ怒るかな、と思い携帯を握り締めて、気付く。そっか、別れたんだった。その瞬間、猛烈な寂しさに襲われた。私は今、独りぼっちなのか。友達も数える程しかいないし、彼氏もいないし、仕事に追われているし。淋しいなあ、と再度思う。犬でも飼おうか、と思いながら頭を振った。忙しいから面倒なんてみてられないじゃないか。

これは、本格的にマズイ、と残りの缶ビールを一気に煽ったら、口の端から、つぅ、と零れた。それを追い掛ける様に、目尻からも、水滴が流れ落ちる。気にしない振りをして、冷蔵庫からもう一本、缶ビールを取り出して、傾ける。そのまま、床に座り込んでしまった。ボロボロと涙がこぼれる。

やっぱり、月に数回しか会えなかったのに、連絡取らなかったのは、マズかったかなあ、と思う。やっぱり、甘えてたんだなあ、と思う。やっぱり、好きだったんだなあ、と思う。

ごめん、と呟いた。彼にはもう、届かないとわかっていても、止められなかった。



end
話題:SS


13/09/12  
読了  


-エムブロ-