「もう君の好きにしていいよ」

そんな無気力な無表情で言われてもグッとこないしムラッともしない。待ち望んでいた展開がやっと目の前に転がりこんできたというのに、俺はそれを蹴り飛ばしてしまおうかとさえ考えていた。狭くて古いアパートの一室で、年季を帯びて変色した部屋の床にへたりこむ彼。それは確かに俺の好きな人で、ここは紛れもなくその人の部屋だ。そして彼が告げたさっきの一言。これは、この状況はもう、据え膳という魅惑的な3文字が一番しっくりくる。だというのに、だというのにだ。俺の理性は死んだようにぴくりとも動かない。その原因はやっぱりお葬式の後みたいな彼の表情にあった。