俺は今日、子供を産んだ。端正な顔立ちと燃えるような赤い髪を持った子で、外見は実に申し分ない。しかしながら、ひどくとてもそれはそれは、最上級の意味である語群たちを心ゆくまで並べ立てたいくらい、不器用な子供だった。せっかくの容姿はその不器用さのおかげであってないものになってしまっている。宝の持ち腐れってこういうことを言うんだな。なんてぼんやり考える俺にしがみついて、生まれたての子供はひたすらわんわん泣いていた。聞いたこともない大声で、見たこともない顔で。俺が産まれたときも、こんな風に泣いたのかなあ。涙と鼻水をぐちゃぐちゃに混ぜて謎の液体を作り出してたのかな。そのとき顔も知らない父さんと母さんは、きっと俺の涙を拭いてくれたんだろう。なら、俺もこいつの涙を拭いてやらないと。なんたって俺は、こいつの第2の産みの親なんだ。基山ヒロトを産みなおした男なんだから。お疲れ様でしたグラン様、もういいんじゃないですかと声をかけた俺に、ヒロトは怒りも悲しみも寂しさも全部全部ぶちまけた。そして最終的には俺にしっかり抱きついてわんわん泣いている。たぶん彼の中でグランはいなくなって、やっと基山ヒロトが産まれたんだ。その門出を真っ先に祝うのがエイリアの下っ端だった俺だなんて、自分でもびっくりしてるけど。嬉しくないわけじゃない、いやむしろ嬉しくて仕方なかった。初めて産声を聞いたのは、初めて顔を見たのは、初めて抱きしめたのは、この俺なんだ。好きな人の誕生の瞬間を見ただなんて、喜ばしくないわけがない。