鹿目さんは、とっても素敵な女の子だ。
低めの身長と大きい瞳は小動物みたいですごくすごく愛らしくて、甘くて優しい声とかとびっきりの笑顔なんかは私とは比べものにならないくらい魅力的だ。左右の髪を束ねている大きな赤いリボンと白いニーソックスは、彼女の柔らかい雰囲気の一端を担う役割を果たしていると思う。性格だって、誰に対しても分け隔てなく接することができて、とにかく優しくて。でも優しいだけじゃなく、芯は誰よりも強い。魔法少女である鹿目さんはいつも恐ろしい敵と命懸けで戦っていて、恐いはずなのにそんな様子を一切見せない。ほむらちゃんは私が守るから、って凛々しい目をして呟きながら弓を構える姿は他のどんな男の人よりもかっこよくて、つい見とれてしまうほどだ。その時ばかりは、私より小さいはずの鹿目さんの背中が大きく見える。でも、敵を倒したら『やったよほむらちゃん』と嬉しそうに笑顔を振りまきながらいつものように私を抱きしめて、そんな鹿目さんはやっぱり、可愛くて。学校の鹿目さんと、魔法少女の鹿目さん。可愛い鹿目さんと、かっこいい鹿目さん。どっちも素敵で、どっちも眩しい。私なんかには、釣り合わないくらいの女の子。どうしてこんな冴えない私と友達でいてくれてるのかが不思議で、でもそんなこと恐くて訊けない。もし、もしも鹿目さんが私と仲良くしてくれている理由が、私が思っているものと違ったとしたら。そう考えると不安で仕方なくなって、

「ほむらちゃん!」

明るく弾けるような声音が背後から降りかかる。聞き馴染んだ、大好きな友達の声。くるりと振り返ると、そこにはやっぱり鹿目さんが立っていた。下校時刻の知らせである鐘を響き渡らせる校内で鞄を持つ鹿目さんは、今から帰るところと見受けられる。ちなみに私もちょうど今帰路への道を踏み出したところだ。

「一緒に帰ろ!」

そう言って、鹿目さんは私に満面の笑みを見せてくれる。ぱぁ、という光が射してくるような擬音が耳を掠めた。太陽みたいな笑顔に負けないように、こっちもできるだけの微笑みを作って『うん』と頷いてみせたけど、たぶん鹿目さんの笑顔には及んでいない。だって向こうは太陽なんだもの、負けて当然だ。それに、勝ちたいなんて思わないもの。
私の了承を確認して、鹿目さんは小走りで隣に走り寄ってくる。私と拳一つ分くらいの間隔のところで立ち止まった鹿目さんは、『ほむらちゃんと帰れるの嬉しいな』と本当に嬉しそうな目をして私を見た。ああこんなときに決まって発症する私の赤面症。熱くなる顔を下に向けて、私も嬉しい、となけなしの勇気を活用して告げてみる。

「ほむらちゃんって、やっぱり可愛いね」

俯く私に、鹿目さんは柔らかい声音で、そう言った。ほむらちゃんって、やっぱり可愛いね。頭の中で鮮明にリピート再生される、唐突なその一言。