ディア、ディアラマ、ディアラハン。いつもいつも戦闘中に耳を包むあいつの呪文。いいなあ回復呪文使えるの。あたしも回復したいのに。あ、どかばき。いたた殴られた。

「ディアラマ!」

ぽわーん、擬音で表すとそんな感じ。あいつが魔法の言葉を唱えたとたんに、あたしの傷はすぐ癒えた。あ、回復してくれたんだ。意外に周り見てるよなあこいつって。

「あんがとー!」
「あとでビフテキ奢れよー!」

うわ、なんとがめつい男。そういうとこがモテない原因なんだよ。なんて白い目線を送っている場合じゃない、今は戦闘中だった。って、うお、また殴られたよ。

「気ぃつけろよ里中!」

ディア、また聞こえる呪文。そして癒えるあたしの傷。…うん、あたしけっこうあいつに迷惑かけてるかもしれない。今度ビフテキぐらいは奢ってやろう。
こんな風に過ごしていって、日が暮れて。帰り道で落ちていく太陽を眺めているとき、ふと隣の花村が呟いた。