久々に聴いた声音は耳によく馴染み、回線の向こうにいるはずのその男がまるですぐ近くにいるような気にさえさせた。「甲太郎、元気?」と問いかけてくるその音はどことなく甘ったるく頭に響く。
「まァ、病気はしてないな」
「なら良かった。俺はさ、昨日敵に猛毒浴びせかけられて大変だったよ」
「なッ……」
突然転がり込む死のにおいにどきりとする。大丈夫だったのかと訊くと、「まあロゼッタの科学技術すごいから」とさらりと言ってのけた。どんな技術だよ、という突っ込みには笑い声だけが返ってくる。
「皮膚ちょっと溶けかけたけど普通に治ったし。いやあ良かった良かった」
「……もしこれからそういうことがあって、治療薬が近くにないときは今から言う植物をすぐ傷に塗れ。応急処置程度にはなる」
言ってから植物の名前と効能を簡潔に伝える。九龍は素直にそれを聞くと、へえ、と明るい声を出した。
「詳しいな、甲太郎」
「詳しくなきゃ専攻してる意味がないからな」
「はは、そうか。でも本当にすごいよ、すごく助かる」
「……そりゃ良かったよ」
助かる、という言葉が胸にすっと沁みていく。そうさ、お前を助けるために俺はこうして机にかじりついている。バイトもしないで毎日ひたすら草木や花に向き合いつづけている。



な〜んにも考えずに書き始めちゃった