よし、今の状況を説明しよう。起きたら布団の中にイングリットがいた、というか俺がイングリットを押し倒していた、しかも思いっきり胸を掴んでいた。以上。氷を通り越した名状しがたい冷ややかさの視線が俺を容赦なく刺す。普段槍扱ってるから突き刺すの上手いなあ、お前。
「シルヴァン。殺されたくないなら今すぐここを退いて」
「はい退きます、退くんですけど、ごめんなさい説明だけしていただいてよろしいでしょうか」
「やっぱり寝ぼけてたの?そんなことだろうと思った」
はあ、と大きなため息をついたイングリットさんは俺に解説を始めてくれる。
「あなたがなかなか教室に来ないから起こしに来たのよ。そしたらここで呑気に寝てるあなたを見つけるでしょう?仕方なく起きなさいと声をかけながら体を何度か叩いたら、寝ぼけたあなたが私を引っ張って寝床に押し倒したというわけ。わかってくれたかしら」
「はい、よおくわかりました……」
「誰と間違えたのかは知らないけれど、私で残念だったわね」
ふ、と嘲笑をそのままこっちにぶつけてくる幼馴染。少し腹が立つが今回は全面的にこっちが悪いので何も言い返すことはできない。