クロエ・プライスが死んでからマックスは少し変わった。何がどう変わったかというのを明確に定義することはできないけど、確実に何かが前とは違っている。科学は万能、とは言っても彼女の感情を求める公式なんてどこにもない。『マックス』に何が加えられたのか?それはきっとナトリウムでもカリウムでもないんだろう。ただひとつ分かるのは、彼女はすごく綺麗になったということだ。
「どうしたの、ウォーレン」
急に立ち止まった俺に振り向く彼女の頬が橙に染まっている。
「マックス、すごく唐突なんだけど」
「うん」
「俺は君のことが好きなんだ。よかったら、俺と付き合ってほしい」
やっと言えた、と思った。まだ出会って一ヶ月程しか経ってないのに。時間の狭間でようやくたどり着いた一瞬間であるような気がした。
風が柔らかく吹いてマックスの髪を揺らす。彼女の特別な瞳に俺が映っている。シャッターを切るみたいに瞬きをしたマックスは、やがて世界の真実みたいなその眼差しで俺の感情を定義した。
「うん、知ってる。……キスしようか」