未プレイ時に書いたもの
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「いま、なんと言った?」

気づけば、目の前の彼にそう問いかけていた。神秘的な装飾が施された彼の部屋には、かちゃかちゃと、2つぶんの角砂糖を紅茶に馴染ませるために回されるスプーンが洒落た陶器にぶつかる音だけが響いている。2日前に知り合ったこの大天使は、意外に甘党だということを知った瞬間だった。そうして砂糖が完全に溶けたことを見計らって、彼は細い棒一つで支えられている天界仕様の椅子にゆっくりと腰を預ける。全体的に細い彼なら座ってもびくともしないようだが、彼よりいくらか重いであろう自らをこの椅子に預けるのは少々の心配があった。そのため、私は先程からずっと椅子2つに挟まれている小さいテーブルの横に立ち尽くしている。彼が自分の紅茶を淹れる前に淹れてくれていた紅茶が、空いている席の前で細い湯気を紡いでいた。

「聞こえなかったのか?」

後に『まあ座れ』と促され、少し躊躇いながらも椅子に腰かける。すると、柔らかく包みこまれるような新鮮な感触を味わっただけで、椅子が壊れるなんて事態に陥ることはなかった。いったいどういう造りになっているのか興味が湧いたが、今はその疑問を解消する時ではない。まず、彼が言った言葉の真意を確認しなければ。
目前の大天使はカップの取っ手に手を伸ばし、紅茶の香りを楽しんでそっと目を伏せる。いい香りだ、と耳に心地よく響く低音を発してから、そのまま紅茶を一口含んだ。そして、受け皿にカップを置いたと思えば、私を一瞥して先程の言葉を繰り返す。

「おまえに惚れた、と言ったんだが」

しれっと、もしくはさらっと、彼はそう口にするのである。ああ、やはり先程の言葉は聞き間違いではなかった。幻聴でもなんでもなく、彼が私に言い放った言霊だったのだ。つまり総合的に且つ簡潔に言ってしまうと、私は今、この大天使ルシフェル様に、告白されてしまった、と。