「……服を脱がせてもいいか?」
「……だから、いちいち訊くなと言っている」
ごくりと生唾を飲むぼくに亜双義は完全に呆れているが、その体は抵抗もなくぼくを受け入れてくれていた。釦に掛ける紐はすべて外されていたから、それ以外の箇所に手を掛けた。徐々に表れていく肌色に目を奪われる。しっかりとした胸板と腹筋。その所々に古傷があることは知っていたけれど、よく見ると新しい傷も増えているように思える。ぼくの視線に気がついたのかまた思考が漏れたのか、亜双義はその傷について言及してくれた。
「船員をしていた頃は、何分力仕事が多かったからな。客人との揉め事も無い訳ではなかったから、必然的にだ。それに従者になってからは刺客の撃退などもすることがあったからな」
「ああ……新聞にも載っていたな」
「まあ、いろいろと苦労もしたということだ」
「おまえなら大丈夫だったろうと思うけど、無事で良かったよ」
傷を撫でながらそう呟く。その痕がほんのりと赤らんでいるのは、皮膚が薄くなっているからだろうか。耳元では微かに吐息が聞こえてきた。



たぶん前書いた奴の削った部分