お題お借りしました(shindanmaker.com/375517)

・銀英伝

「なんだい」「いや、こうして英雄のつむじを真上から眺めるのはなかなかに面白いと思いましてね」「上から見りゃみんな同じさ。英雄のつむじなんてものは存在しないよ」「しかし、英雄の幕僚のつむじは存在しますよ。残念ながら美女である・ベッドにいるという条件が揃わないと見られませんが」「そいつは残念だね」「ですが閣下であればもうひとつの条件を満たすことができます。独裁者となり、私に頭を垂れさせることです。閣下、私のつむじを見たくはありませんか?」「もし私が独裁者になって貴官に『そうしろ』と命令したら、その瞬間に英雄の幕僚のつむじは存在しなくなるだろうね」
(シェーンコップ+ヤン)

いえいえ決して閣下を馬鹿にするため笑っているわけではありませんとも。ただ英雄などと囃し立てられたはずの貴方が、こうしてあからさまに崇められることの何と似合わぬことだろうか!豪奢な額縁もきっと泣いているでしょうよ。さあ今すぐ飛び出してごらんなさい、小官が受け止めて差し上げましょう。
(シェーンコップ+ヤン)

ああ嫌なものを見た、これなら幽霊でも見るほうがマシだな。…なんて冗談を言っても誰も笑ってくれないし、あの男は私の宿らない『私』をいつまでも見ている。その表情ときたらもう、最悪の一言に尽きた。貴官は含み笑いをする表情筋しかないのかと思っていたよ。本当に、これだから戦争は嫌いなんだ。
(シェーンコップ+ヤン)

「おいで」暗闇の中で提督はぼくに手を伸ばす。表情は殆ど見えないけれど、その目の輪郭は僅かに光っていた。別人のようだ、と思う。彼は確かにヤン提督なのに、ぼくはその手を未だ取れずに立ち竦んでいる。細められた瞳に浮かぶのが安心なのか悲嘆なのか、それすらわからないことに絶望しそうだった。
(ヤンユリ)

「こうしてるとここが世界の全てのように思えるな」寒冷惑星でのキャンプの最中、提督がそう呟いた。肌寒い真っ暗な部屋と怪談話に花を咲かせる二人の男、これを世界と称するには足りないものが多い気がするけど。でも提督の顔には不満でなく充足が浮かんでいたので、ぼくは笑顔でそうですねと返した。
(お題:たった二人の世界/ヤンユリ)

「コーヒーのブラックの美味しさがわかったとき人は大人になるって昔父が言っていましたよ」貰い物のコーヒーをどう処理するか悩んでいたヤン提督にそう言うと、彼は眉を顰める。「だったら私は一生子供のままでいいよ。お前も子供のままでいなさい」そして次の言葉は勿論これだ。「ユリアン、紅茶を」
(お題:大人の定義/ヤンユリ)

「物理法則が狂っているんじゃないか、という気持ちに最近よくなるなあ。お前だけがどんどん成長していって、私はまったく変わらないままというふうに思える。ああ、取り残されることのなんと寂しいことか…」「提督、ご心配なく。提督もきちんと歳を重ねていますよ、残念ながら」
(ヤンユリ)

「でも、ちょっと変じゃないですか」「何がだい」「ぼくももう小さな子供じゃないのに、はぐれないように手を繋ぐだなんて」「この喧騒だよ、お前。こうでもしないと一瞬で見失う」「そうですけど…」それでも戸惑ってしまう。恐らく、小さな頃に父とこうして歩いたことを思い出してしまうからだろう。
(ヤンユリ/イゼ日記ネタ)

「永遠なんてどこにもないよユリアン、どんなものにも必ず終わりはあるんだ」人工の星々を見上げながらヤン提督は呟くようにぼくにそう言った。永遠がどこにもないということ自体は未熟者のぼくにも理解はできる。莫大で果ての見えない宇宙でさえ永遠には存在しないだろうし、そうなれば人類も永遠に繁栄することはないだろうし、歴史もいつかは停滞ではなく停止を迎えるだろう。でも、これらは「である」ではなく「だろう」の話だ。永遠はないという師父の断言の根拠は意外にも存在しない。そしてそれは今日、ぼくの中でより強固なものになった。
カリンが淹れてくれた紅茶には砂糖の代わりに塩が入っていて、噎せながら目にした焦げ茶色の水面には困り顔のぼくが映っている。そこで、かつて全く同じ事態を提督と繰り広げたことを思い出した。提督、もしかしたら永遠はあるのかも知れません。生意気な反論も今なら告げられる気がした。
(ヤン+ユリアン/お題元:大親友の彼女の俺さんには「永遠なんてない」で始まり、「今なら告げられる」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字程度)でお願いします。 shindanmaker.com )

「忘れ方を教えて欲しいものだね」「何のことですかな?」「女の顔だ。一晩は共にいたというのに、そうも簡単に忘れるものなのか?」先刻道端で起こった私と私の『客人』とのいざこざに対し、我が閣下は眉をひそめ苦笑する他のリアクションを取りあぐねている様子だった。呆れた様子を隠そうともせずにその目は冷ややかにこちらを見やる。「閣下はお忘れにはなりませんか」「まあ、忘れはしないだろうね。機会があればの話だが」「…女を排した独身生活というのは寂しいもんですなあ。どうです、今夜一杯」「なんだ唐突に。美女と飲んだほうが楽しいだろうに」「今日は上司と引っ掛けたい気分でしてね」
(シェーンコップ+ヤン)


・その他

「民のことを深く愛しています、それは決して揺るがない私の中の真実です。けれど、愛しているがゆえに……」「つらいの?」「……」「……あんた、眼鏡のレンズ白くなってるわよ。私のことちゃんと見えてる?」言うと、彼女は私の眼鏡をさっと取り上げました。曇ってしまっているレンズを一瞥して眉をしかめています。「こんなんじゃ周りのことも見えなくて当然よ。まあ雪国だから仕方ないけど。でも、曇っちゃったなら拭けばいいの」リーズレットは私のレンズを丁寧に拭くと、また私にそれをかけてくれました。「どう?私が見える?」「はい」「あんたは今、自分が一人だと思う?」「……いいえ」「そういうことよ。自分から一人になろうとしなくていいの。あんたの言う民だってあんたと同じ人間なんだから、頼れるものには頼りなさい」「あの、リーズレット……」「なに?」「あなたも我が一族の家宝になりませんか?」「……は?」
(DQ11/シャール×リーズレット)