「いやー、ゴメンゴメン。まさかラブアパートの扉が故障しちゃうなんて思わなかったねー。今から修理しても直るのは朝になると思うから、悪いんだけどオマエラ朝までここで待機しといてくれる?」
確実に故意の故障だ。もはや推理なんてしなくても分かる。じゃあそういうことで、と早々と姿を消したモノクマにぶつけ損ねた恨み節を口の中で転がしたまま、さてどうすべきかと漠然と考え始めた。僕の隣にいる彼ーー百田くんが『いつも』の百田くんであれば、不安なんて特に感じないままちょっとした旅行気分で一晩を過ごすことも出来ただろう。けれど今僕の横にいるのは、この空間で作り上げられた普通じゃない百田くんだった。彼はいま僕を理想の相手だと思い込んでいる。そんな相手と朝まで二人きりというのを、どう捉えるのだろうか。その横顔を見やっても感情らしい感情は何も拾えなかった。こんな風にたまにすごくやりにくいところを見せるのは普段でもここでも一緒だな。思いながら、気づかれないように息を呑んだ。気まずいにも程がある。