二人だけの秘密が欲しい、なんて馬鹿げたことを呟いた僕に百田くんは笑った。「今日の夜10時、誰にも見つからないように屋上に来い」と言われて、言葉の意図を読み取れないまま頷く。やがて時計の針が10時を指した頃、こっそりと部屋を出て静かに屋上に向かった。冷えた鉄の扉を開けて辺りを見回すと、ちょうど真ん中に百田くんが座っていた。扉の開く音に気づいて振り返り、僕に手招きをする。
「誰にも見つからなかったか?」
「うん、大丈夫だったよ」
話しながら隣に腰を下ろす。上出来だ、と僕の背中を叩く百田くんはたいそう満足気だった。


百田くんが王馬以外の特定の人間と作る秘密が一ミリも思いつかなくて死んだ