「ありがとう、亜双義」
そう言って檻の向こうで涙を流す友を網膜に刻み付けるようにじっと見つめていた。格子が邪魔でその傷ついた手を取ってやれないのがあまりにもどかしい。分かっているか成歩堂、キサマ、オレの前で涙を見せたのはこれが初めてだ。
刑務所の前に立っていた看守が門を潜るオレの後ろで吐き捨てるような笑い声を短く漏らした。そいつはオレが成歩堂の弁護を引き受けたことをきっと知っていた。受付の男も案内人も皆、うすら寒い笑みをその顔に貼りつけていた。果てには、ただの罪人によくも其処までの労力を割けるな、という潜んだ声が耳に飛び込んできた。この渦中に友が居るのだ。そう思うと、泥でも噛み砕いている気になる。