「成歩堂さま、お久しゅうございます」
久々に会った彼女の表情は既に母の装い、ぼくが隣で見つめていた少女は少女という礼装を綺麗に畳んで引き出しの奥へしまいこんだ様子だった。お久しぶりです寿沙都さん、と言う自分の声が歪んで鼓膜に響く。こんなにも馴染むのに、どうしてか違和感が抜けない。お元気でしたか。
「健康に暮らしておりますとも」
家の中から子供の声がした。きゃあきゃあと甲高く可愛らしい女の子の声だ。そちらを一瞥し、困ったような顔で「騒がしくて申し訳ございません」と笑う。ずいぶん大人びた目元になったのだな、と思った。

「粗茶ですが、よろしければ」
縁側に腰かけるぼくの後ろから盆を持った寿沙都さんが現れる。湯気の立つ薄緑の湯呑みはどこか彼女らしい。
「ありがとうございます」
言うと寿沙都さんは微笑み、ぼくの隣に腰かけ盆を間に置いた。庭にそびえる松の木が池に反射している。湯呑みを手に取り、庭を眺めながら茶を啜った。ずいぶん懐かしい味がする。
「相変わらず美味しいですね。安心します」
感覚に刷り込まれた味だ。毎日これを口にしていた倫敦での日々が体に蘇る。お茶を点てる彼女のかんばせが窓から入る光に照らされて、やけに眩しかった。
「わたしはいつも飲んでいるものですから、たまにお紅茶を恋しく思ってしまいます」
両手で湯呑みを持つ寿沙都さんの視線はどこか遠くを見つめている。言外に含まれた少女の存在を捉え、そうですね、と頷いた。
寿沙都さんの今の面立ちは愛らしさよりも美しさが際立っている。十六の頃から見惚れるほどに美しかったけれど、それがさらに洗練されたように見えた。
「寿沙都さん、とてもきれいになりましたね」


いつ書いたかわからん
人妻の寿沙都さんが性癖なんスわ、、