「陽介はそんなに人殺しになりたいの」

唐突にそう言ったのは確かに目の前のこいつである。こいつであるんだが、どうもその事実を享受できなかった俺は返答を見送った。いつも冷静で穏やかで、俺が僭越ながら相棒の座に居座らせてもらってますって言いたくなるぐらいの完璧超人のこいつが、いきなりそんな物騒なことを言い出すんだからそりゃあ俺じゃなくても驚くだろう。転校三昧の人生だったからか人の気持ちには誰よりも敏感なこいつが、まさかそんな無礼発言をぶちかますなんて。なに、おまえの中ではもう無礼講の季節来ちゃってんの?春はまだ先だぞ?見ての通り俺だいぶ厚手のジャンパー着てるぐらいまだ寒いよ?あと無礼講っつっても無礼に振る舞っていいって意味じゃないからな。と、こいつは今お花見特有のはっちゃけ感を持ち合わせて無礼講大会気分にでも浸ってるのかと冗談半分いや冗談全部で考える。が、冗談にはすぐ飽きた。さて、そろそろ本格的に思考の回路を巡らせようじゃないか。そう思ったが、右や左から聞こえてくる老若男女の様々な声がどうしても耳に入ってきて気を逸らさせられる。ああ日曜のフードコートは苦手だ、ざわざわしてるのは嫌いじゃないけどこれは人が多すぎる。こんなちっさい町のどこからこんなに人が来るんだよ。さすが天下のジュネスと胸を張ることさえ億劫なんだから相当だ。というかわざわざこんな混雑した場所で、なんでこいつはさっきの台詞を俺に投げたのか。そこも疑問の一つだった。とにかく今は、こいつの考えてることが珍しくわからない。1年近くの間ずっと傍にいて、こいつのことはある程度わかっているつもりだったが、どうやらそれは自惚れだったのかもしれなかった。


花村が生田目をテレビに落とそうとしたことについて怒ってる番長を書きたかったはず