ボクがまだ自我を持って間もない頃、研究所で一匹のハムスターが飼われていた。博士は朝と晩にこの子に餌をやるようにとボクに言いつけていて、ボクもその教えをしっかりと守っていた。生き物の世話をすることでより豊かな感情を学べるようにという博士のねらいだったのだろう。
ある日、いつもどおり餌をあげたのに、ハムスターが普段のように小屋から顔を出さなかった。どうしたのだろうと小屋を持ち上げてみるとハムスターは丸まったまま微動だにせず、手のひらの上に乗せても何の反応も示さない。きっと充電が切れてしまったのだろう、ボクも充電がなくなると動けなくなってしまうからよく分かる。そう思いながら博士のところまで駆け足で向かった。忙しなく何かの機械を操作していた博士に声を掛け、ボクは「ハムスターの充電をしてあげてください」と言った。すると博士はとても寂しそうな顔で微笑んで、ボクの肩をそっと掴む。瞳の奥がとても優しかった。
いいかいキーボ、どんな命にも等しく終わりというものがあるんだよ。
そう切り出した博士はボクに命について教えてくれた。生き物の寿命や命の尊さ、ボクも博士もいつかは平等に死ぬのだということ、他にもたくさんのことを。話を終えた後、ボクと博士は研究所の裏庭にハムスターを埋めに行った。何だか不思議な気持ちです、とボクが呟くと、博士は「涙腺もつけるべきだったな」と申し訳なさそうに眉を下げていた。
「と、いうことです!どうですか、これで分かったでしょう!ボクはそうやって皆さんと同じようなプロセスで倫理や感情を学んできたんです!ですからボクをロボットだからといって差別するのは確実に間違いなんですよ、王馬クン!」
「ふーん。で結局ロボってチンコついてるの?」
「あなた本当に最低ですね!!」