育成計画ネタで微妙にほしのこえパロ
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『28歳の終一、元気にしてるか?17歳の百田解斗だぜ!8.6光年も飛んじまったからずいぶん時間がずれちまったな。そっちはだいぶ変わったか?こっちはいつ帰れるかはまだ見当もついてねえが、絶対テメーとハルマキを迎えに地球に戻ってくるから、それまでちゃんとトレーニングして待ってろよな!』
テメーらのボスより、で締め括られたメールを受信したのは午前0時過ぎのことだった。その日僕は久々に探偵の仕事で失敗して、いつもは買いすらしない缶ビールの3缶目を開けたばかりで、窓の外では雪が降っているのにエアコンの効きが悪くて、とにかくただ寂しかった。メールを目にした瞬間酔いなんてすぐに覚めて送信者の名前をばかみたいに何度も確認する。そうだ、百田くんはまだ僕らが高校生だった時に宇宙へ飛び立って、それから今もまだ帰ってきていない。僕と春川さんは百田くんが帰ってくることをずっと信じていた。けれどこうも突然に連絡が来るとさすがに面食らう。8.6光年、という文字を見つめて、彼は今(と言っていいのか分からないが)そんなに遠くにいるのか、途方もないな、とただただ感心してしまった。そしていつの間にか疲れや悩みや寂しさは彼方へと吹っ飛んでいた。

「やっぱりあいつ本当にバカだよね。私達28じゃなくてまだ26なんだけど」
カフェテラスの一角で春川さんは呆れたようにそう呟く。やっぱりそっちにも届いてたんだ。言うと、ぶっきらぼうに頷いた。
「計算もできないのに宇宙なんかにいて大丈夫なの?」
「あはは。まあ急いで送信しちゃっただけじゃないかな?」
「またあいつのこと庇う。全然手下根性抜けてないね」
否定できずに苦笑を返しながらコーヒーを啜る。春川さんはこんな風にそっけなくしてみせるけれど、本当はまだ百田くんを大事に思っていることを僕は知っていた。その証拠に、僕らは今でもたまに会ってトレーニングを続けている。いつか百田くんが迎えに来たときのためにとずっと準備を続けているのだ。3人とも諦めが悪いなあと春川さんのホットラテから立つ湯気を見つめながら思った。そういえば最近、春川さんはとてもきれいになったのだけど、果たして百田くんはそんな春川さんを宇宙から見つけられているだろうか。早く帰ってこないときっと損するよ、百田くん。そんな焦燥は余計なお世話だと知りながら、僕は春川さんの伏せられた睫毛を音も立てずに眺めている。