最近どうにも心配なのが暁の立ち居振舞いだ。誰にでも優しくて聞き上手で思わせ振りな態度ばっかり取っていやがるから、みんながこいつに寄ってくる。それも老若男女も何も問わずだから恐ろしいもんだった。連絡はひっきりなしに来るし毎日誰かのものになりに忙しなく出掛けていく様はまさに魔性の男で、人たらしっていうのはこういうやつを言うんだなといっそ参考にすらなる。一度体はもつのかと訊いたことがあるが、「平気」と涼しい顔で一言だけ返してきた。まあ本人が大丈夫ならそれでいい。
……とはいかないのが現状だ。こいつは前述のとおりまさに魔性で、特に女の子に関しては憎たらしいことに引くほどモテモテなのだ。知ってる限り片手で数えられないくらいの女性に好意を向けられている。あんまり安易に気を持たせるのもどうなのかと思うし、いつかとんでもない修羅場になっちまうんじゃないかと考えると何故か本人よりワガハイのほうが心配になった。だいたい男なら一人の女の子に一途になるべきなんじゃないのか。ワガハイのアン殿一筋という姿勢を見習うべきだぜ、この男は。
そうして考えている間も暁はワガハイの横でベッドに寝そべってスマホをいじっていた。覗き込んでみると案の定女の子にチャットを送っている。嬉しい顔ひとつせず慣れきったような真顔なのが癪に障った。
「オマエ、いつか刺されるぞ」
呟いてみると、暁はこっちに目を向けてのほほんと微笑む。笑い事じゃないと思うが。自覚ってもんが足りていない。
「大丈夫だよ」
「へん、ワガハイどうなっても知らねーからな」
「心配してくれてるんだな」
言ってろ、と返して暁に背を向けて寝直す。出会った頃はもっと野暮ったくて冴えなくて何もかも不慣れって感じのやつだったのに、いつの間にかえらく垢抜けちまった。最初パレスの中で不安そうにワガハイに着いてきていたのももうずいぶん昔のことみたいに思える。
そうだ、今となっては人間関係も怪盗業もさっさと上手にこなしちまうこいつも、最初はよくワガハイのことを頼っていた。戸惑いを一心にこっちに向けてくるこいつの目は今でもよく覚えている。まあいろんなことに馴れてくれたおかげでパレスとメメントスの攻略なんかもかなり楽になって、取引相手としてはそうやって垢抜けてくれたのはもちろん喜ばしいことだ。それは違いない。ーー違いないはずなんだが、最近なんとなく面白くないような、妙な気持ちになる。
「モルガナ、怒ってる?」
ふと声をかけられる。それがどうも寂しそうな雰囲気の声だったから、仕方なく暁のほうに体を向けてやった。その眉がいつも以上に困ったみたいに下がっている。スマホはもういじってなくて、枕元に雑に置かれていた。
「怒ってはねーよ」
「よかった」
ああ、今の顔はちょっとなつかしいなあと思う。最初の頃の不安そうな顔と同じだ。例えばあの頃とか、満員電車でこいつが窮屈そうに縮こまってる時とか、クラスのやつらにひそひそ噂されてる時とか。ワガハイいつもぼんやり考えてることがあったんだ。
「なあ。オマエが女に刺されるのは自業自得だが……」
「うん」
「それ以外の事からは全部、ワガハイが守ってやるからな」
もうワガハイのほうがこいつより弱いのは分かってるし、こいつにはワガハイ以外にも守ってくれるやつがいっぱいいることも分かっている。けれど守ってやりたいことを諦めるのは嫌だった。なにせワガハイ男だし、紳士だから。……なんだかアン殿に抱くのと同じような気持ちだ。
「ありがとう」
暁は嬉しさをまったく隠そうとせず表情に出す。その笑顔があんまりに無防備だったから、これを見られるのはワガハイだけだったらいいのになあ、と柄にもないことを思ってしまった。


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