「ねえベルベット。あんたお嫁に行く予定ないの?」
「見てのとおりよ。ニコはないの?いい雰囲気になってる人、いるじゃない」
「んー、なんかさあ。もうちょっと遊んでたい気もするっていうか」
「うわ、リアルな愚痴だ」
「今はあんたがいるからいいかな?みたいな」
「あたしとは結婚できないわよ」
「ねー。残念」

祠に行かなきゃ、と、漠然と思う。特に用事なんかないはずなのに、どうしてかこの道の向こうがずっと気になっている。しっかりと閉ざされた扉に手を当て、どうしてそう思うのかをじっと考えた。
「あ、ベルベット!」
後ろからニコの声がする。振り返ると、頬をふくらませて眉を上げながら彼女があたしを睨んでいた。せっかくの可愛い顔が台無しだ。
「ダメだよ、向こう行っちゃ!一人そこ通ったら聖寮に叱られるのあたしたち全員なんだからね」
「ああ、ごめんごめん」
扉から手を離してニコに笑いかける。