本日の講義がすべて終わり外套を羽織って大学を出ようとしたところ、ちょうど門の前程で成歩堂と出くわした。ヤツも外套を着込み帽子をかぶっていて、きっとオレと同じく帰るところなのだろう、と思う。
「成歩堂。偶然だな」
今日は互いの講義がひとつも被っていなかったので成歩堂と顔を合わせるのはこれが初めてだった。自然と綻ぶ顔を自覚しながら、親友にそう声をかける。だが、成歩堂はオレに返事を返さなかった。ただじっとオレの前に立ち尽くしている。何だか様子がおかしい。その表情は深く被られた帽子に隠されているためうかがい知ることはできなかったが、表出している口許はかたく引き結ばれていた。
「成歩堂?」
顔を覗き込みながら名を呼ぶ。だが、やはり返事はない。腹でも下したのだろうか。それとも何かもっと深刻な状況に陥っているのだろうか?本格的に気を揉みはじめた、まさにその時だった。成歩堂が突如オレの手をとる。そして、大学の外へと歩き始めたのだ。
「おい、成歩堂!」
強めに呼びかけるがやはり言葉が返ることはない。オレを掴むその手の力はあまりにも強く、振りほどこうにも中々それを許そうとはしなかった。コイツの柔な拘束程度、普段ならばすぐに逃れられるというのに。火のように熱いその手がオレの抵抗ごと炙っている、そういうものもあるのかも知れない。
引っ張られるまま学生街を抜け、通りの外れへ突き進む。この道筋には見覚えがあった。もしかすると、成歩堂はオレを自らの下宿先に連れていく気なのかもしれない。そんな予想は当たっていたようで、やがてオレ達は成歩堂の下宿先にたどり着いていた。そのまま引きずられるように成歩堂の部屋の前に連れられ、けたたましく引き戸を開けて突き飛ばすように押し込まれる。よろけた足をなんとか踏ん張り、振り返って「成歩堂」と苛立ちを隠さずに呼んだ。


かきなおしちゃった〜