・大逆裁(ほぼ龍アソ)

本当はもっと単純なことだ。ただ手を握って、一言呟けばそれですべては終わる。指先同士が絡まり、ほどけないよう際のぎりぎりで触れあいつづけて、次にぼくがおまえを見るだろ。おまえは、ぼくをじっと見つめているだろ。ぼくたちの時はきっとそこで止まる。聡明なおまえがわからないはずはないのに。

ああよかった、まだおまえの顔を思い出せる。ぼくはおまえに恋をしていたわけじゃなかったんだ、亜双義、ぼくらはずっと親友だったものな。なあ、……おまえの笑顔だけが思い出せないのは、きっと何かの間違いなんだ。すぐに思い出す。あんなに眩しかったものを忘れるほうがどうかしている、……。

「おまえと一緒にいると変な気を起こしそうになる」成歩堂、それは押し倒しながら言う事ではないだろう。震えながらに言う事でもない。苦渋に歪められた顔を前に全身がどうにも疼く。何をそう怖がる。何にそこまでこだわる。オレとキサマが相棒だということは、今更どう転ぼうが変容などしないだろう。

「おまえはきっと長生きするよ」ぼくの言葉におまえは確かに微笑んだだろう。言われなくとも、なんて返してこの背中を叩いただろう。白い縁取りを前にして、ぼくは立ち竦む。乾いた唇も目も気に留めず、ただ思考だけを働かせる。嗚呼おまえが嘘吐きになってしまった。ぼくも、おまえを騙してしまった。

二人で夜道を散歩していたら川の魚が跳ねて、ぽちゃん、なんて澄んだ音を立てて水中に帰って行った。あの時、ぼくは目前のこの男がわざわざ自分を夜に呼び出した理由について、はっきりと分かってしまった。だってあの魚ったらまるで鯉だったじゃないか。…なんて言ったらあきれるだろうか、おまえは。

「おはよう」朝陽に照らされるその顔を見た瞬間、怒りにも似た恋情が胸の中で激しく燃えるのをはっきりと自覚した。寝起きの頭は完全な覚醒を持って、その暴力的な感情でオレを殴り付けてくる。焦燥が全身に回るのは一瞬だった。湿る手をきつく握る。誰が手離してやるものか、コイツはオレのものだ。

「鼻が低いね」ぼくの顔を散々撫で回したあと、鼻筋に指を這わせながら彼はそう言った。この人のこういう言動にはもう慣れ始めている。「そりゃ日本人ですから」「ふうん」気のない返事をして、また頬や顎を撫でる。その後、うん、いいねと呟いた。「キミ、ボクのものにならないかい」「…いいですよ」
(龍シャロ)

寿沙都さん、出産おめでとうございます。寿沙都さんによく似た可愛い赤ん坊ですね。寿沙都さん、ぼくはずっとあなたのことが大好きでした。もう時効かと思うので、どうしても今日はそれだけ伝えておきたかったんです。……さすが、もう困ってもくれませんね。寿沙都さん、とても綺麗です。
(龍スサ)


・その他

ってしまいました」また泣いてる。いい加減そういうのやめたら?もう見飽きたよ、めんどくさいよ君は。わかってるくせになんでまだ泣くかなあ。そう何度罵ろうとクソガキの涙は止まらない。もう故障だろ。返品できねえかなあ。ていうかまず買った覚えもないんだけどな。「足立さん、俺はまた一人にな
(P4/主足)

「汐ちゃんがね」硬直、みたいな。そんな普通の反応しか僕には出来なかった。入園してきたの、うちに。とか言ってさ。口をつけずに置いたジョッキから水が伝って、机の木の色を変えている。「いい子よ。本当」そりゃ僕の顔は盛大にひきつったね。この話の中で誰がバカかってそりゃ、僕含め全員だろう。
(クラナド/春杏)