気が付けばぼくは亜双義と鍋を囲んでいた。ぼくらが毎週のように通っていた牛鍋屋の、毎回食べていたあの牛鍋だ。肉の煮えるぐつぐつという音が耳に響く。鼻腔をくすぐる匂いもなかなかのものだった。懐かしい。あの頃に戻ったみたいだ。
 向かいの亜双義は穏やかな笑みを顔に浮かべていた。小皿を左手に携えて、そっと鍋を見据えている。肉を探しているのかな。コイツ、目を離すとすぐ肉をさらってしまうから、注意して見ておかないと。
「……なんだ、喰らいつくように鍋を見つめて」
 ぼくが身を乗り出して鍋を注視していると、先程までにこやかだった亜双義がふと訝しげな表情でこちらに視線を寄せてきた。


前140字で書いたやつを長くしたいな〜と思ったけど心折れた