講義中、隣に座る亜双義の仕草をつい目で追ってしまうときがある。ペンで文字を書くときの折り曲げられる指だとか、時折教授の言葉を小さく反芻するときの唇だとか、真っ直ぐ前を向きつづける真剣な瞳だとか。そういうものをあらためてじっくり見てしまい、やっぱりカッコいいなあなんて考えてしまう。亜双義はぼくの視線に気づいているのかいないのか、こちらに目を向けることは滅多にない。だからぼくは亜双義を間近でじっくり観察できる。大袈裟かも知れないけれど、それは親友であるぼくのちょっとした特権のようなものだった。
だからその日もぼくは亜双義の横顔をじっと見つめていた。亜双義はいつもどおりぼくの視線には気づいていないのか、じっと教壇に目を向けている。


何書こうとしてたか完璧に忘れたシリーズ