「ではミスター・ナルホドー。推理と論理の実験を始めるとしようか」
そう言ってぼくの頬を撫でるのは、あのシャーロック・ホームズである。弄ぶように動く指の隙間からはさまざまな感情や騙りがこぼれ落ちていく。
「ボクがこれから暴くのは、そうだなあ…キミのすべてだ」
「…すべてって?」
「それはもう、すべてさ」
そう微笑む唇は楽しげだ。もうとっくに暴いているくせに、心ゆくまで茶番を楽しもうとしている。その瞳を見るたびぼくは頭を鈍器で殴られているような気持ちになる。そういうこともきっと、知っているのだろう。そんなぼくの熱く燃える魂を見据えながら、彼は得意気に微笑んだ。
「ほら、またひとつ見抜けた」
そしてぼくに口づけるのだ。何を見抜いたかはすぐにわかる。自分でも自覚しているくらいの、実に大きな事実だ。それを暴かれたところで、きっと彼がふだん提示する様々な衝撃のうちにはきっと入らないだろう、と思う。……けれどぼくは息をのんだ。


お題「腐った衝撃」でした