キサマに仇をなす者はこのオレが始末してやろう。そう言って亜双義はやたらに爽やかに笑った。ああ、冗談が下手なのかなあ。ぼくはぼんやりとそんなことを思いながら、あははと笑った。「キサマ、何もわかっていないだろう」なんていう亜双義の言葉はそのまま聞き流してしまった。それが一ヶ月前の話。
 足元に転がっているのは見たこともない凶器だった。いびつにひしゃげて転がっている。その先にあるものを極力見ないようにしながら、ぼくは顔をあげて亜双義を瞳に映した。亜双義は微笑んでいる。
 「そんな顔をするな」
 「キサマ、やはり何もわかっていなかったな」
そんなことを言われても、ぼくはこんなことわかりたくもなかったよ。おまえがぼくのために未来を閉ざすだなんて、考えただけで恐ろしかったのに。ぼくはこれからどうしたらいい。おまえに何をしてやれるというのか。
 「くだらんことを考えているだろう」
 「そりゃあ、考えるさ」
「無駄なことだ。キサマはもう何も考えずにオレの傍にいればいい」
そんな難しいことを言う。ぼくは亜双義がなにより恐ろしいと思った。どうしてぼくなんかのために人を殺したんだ。呟くと、亜双義は呆れたようにため息をついて、それから笑った。相棒だからだと。


お題「ねじれた凶器」でした