何がどうというわけではない。ただ、亜双義の反応を見てみたかった。それだけの話なのだと、今となっては思う。
亜双義が昼飯を食べている音がクローゼットの中にそっと入り込んでくる。かちゃかちゃ、と西洋食器の数々がたまに皿に触れているのだろう音。亜双義は物の食べ方がきれいだ。箸使い、椀の持ち方、食べる順序。どれも手本のようにきちんとしているので、前から昼をともにするたびすごいなあとひっそり感じていた。それは道具や食べ物が西洋式にすり変わっても遺憾無く発揮されている。いっそ規則正しい食器の音を聞きながら、隙間から漂ってくる匂いに腹が翻弄された。もうそろそろ、来るかな。そう思ったまさにそのとき、食器の音はやみ、次に床を鳴らす靴音が聞こえてきた。
「成歩堂」
とんとん、と控えめにクローゼットが叩かれ、おさえ気味の声量で名前を呼ばれる。来た。ぼくの昼飯の時間だ。
「開けるぞ」
亜双義はクローゼットを開け、この船内でのぼくの部屋に光を灯した。急に入るそれにいつも目を細めてしまう。亜双義はぼくの鼻先に海老の半分と豚ひときれだけが乗った皿をつきつけた。味には申し分ないが、量はやはり分がない。ふたりで半分にしているわけだから、仕方がないといえばそうなのだが。亜双義だってきっとひもじい思いに耐えているのだろうな、といつも考えてしまう。
「ありがとう」
そう告げて受け取ると、亜双義はいつも「閉めるぞ」と言ってクローゼットの扉を閉める。そしてぼくは暗闇の中で飯を食らうのが通例だ。
しかし、今日は違った。亜双義は扉を閉めようとはしない。
「……亜双義?」
問いかけると、亜双義はなんだかいつもとは違う顔をしてみせる。うまく言い表すことができないが、まるで申し訳ないと言いたげなそれだ。


2章やり直したらさすがにご飯はテーブルで食べてたんで没で…というか何を書こうとしてたのかまったく思い出せない
あと龍ノ介くん金持ちっぽいにおいがするので食事マナー普通に良さそうな気がしてきました 亜双義のほうが悪かったりしてね どう転んでもかわいいね